~瞬間の美に共存する、夢への憧憬~
岐阜を拠点にフリーランスの写真家として商業写真に携わる一方、2017年からは作家活動にも精力的に取り組み、国内外で多数の作品を発表されている、写真家の河田さん。本展では、子供の頃から慣れ親しんだ岐阜の長良川の花火をモチーフに、夢を追い求める人々の心情を、光の形や色彩を用いて抽象的に表現されたとのこと。ご自身の感情と向き合うことで表出されるイメージの煌めきは、一瞬の美を体現する花火に織り交ぜられ、見る者にその情景を共有します。
――花火をモチーフとして選ばれた経緯を教えてください。
息子がまだ幼い頃、長良川の花火大会へ連れて行きました。打ち上げ場所のすぐ下辺りで見ていたため、私たちの目の前で、空いっぱいに花火が広がりました。子どもは純粋なので、今にも手が届きそうな花火を取ろうと、夢中で飛び跳ねていて。手が届きそうで届かないその光景はとても印象的で、ずっと頭の片隅に残っていました。本展の制作をはじめた頃は、残りの人生をかけてまた夢を追いかけてみたいという思いが強まっていた時期でもありました。そのような中で、花火の情景を思い出し、夢を追い求めている人たちの姿に重なるようにも感じられ、本作品の制作へと繋がりました。また幼い時から両親や友達、そして子どもたちと毎年見続けてきた長良川の花火だからこそ、蓄積された思い出が作品に活きているのだと思います。
――本展では、「夢」が一つのキーワードとなっているのですね。
制作をはじめた2017年は子供の成人を間近に控えており、自身の第二の人生について考えていた時期でもありました。残りの人生で私は何ができるのか、どうしたいのかと自分自身を見つめ直す中で、「夢」はとても身近なテーマに感じられました。また、仕事で20歳前後の子どもたちを撮影する機会がよくあり、その子たちが夢に向かって努力している様子や、挫折している姿なども間近で見てきました。私がその子たちにしてあげられることはないかもしれませんが、夢を応援したいという思いを本作品に込めています。
――寄りで撮影されてることで、花火を構成する、光の点や線が浮き彫りになっている点が面白いですね。
そうですね。花火らしい花火の写真がほとんどないので、お客様から「これも花火なの?」といった質問も結構あります。私が見ている部分は独特なのでしょうね(笑)
――そういった視点が、作品の独自性に繋がっているのだと思います!展示構成についても教えてください。
今年ならではの展示構成となっています。冒頭は、コロナ禍で皆さんが苦悩なさっている現状を表した作品。その後、夢を追い求める人々の様々な感情を表現した作品を展示しています。続いて希望を、そして家族や友達など様々な愛を表現した作品が続きます。最後は、未来に向けた私からのメッセージを込めた作品といった構成になっています。
――大半の作品にはキャプションが付いていませんね。これには何か意図があるのでしょうか。
本展ではあえて、ほとんどの作品にキャプションを付けていません。作品の背景には様々な感情が潜んでいますが、それを定義してしまうと、見る側が自由に作品へイメージを重ねられなくなってしまうので。見てくださった方の感性に委ねたいという意図があります。
――本展の合間に、「Someday」という作品群が差し込まれている点が印象的ですね。
「Someday」は、大人になる子供たちの葛藤や希望を表した作品です。夢を追い求める人々を応援したいという、本展の意図と合致しているため加えました。本作品では、親と子の関係性の変化もテーマとなっています。親としては、子どもたちが苦しむことがないよう、いつまでも手助けをしたくなるものです。ですが、子どもたちは親が思っているよりもずっと逞しい。撮影を重ねる中で、親は子供たちを信じ、そっと見守る程度で良いのではないかと思うようになりました。そして、本作品は自身の子どもたちだけではなく、これから大人になっていく全ての子どもたちへ向けたものです。今苦しい状況にある子どもたちに、あなたの頑張りを周りで見ている人は必ずいるから、挫けず頑張ってというメッセージも込めています。作品をご覧になった子育て世代の方や、ご年配の方から、まさに自分も子どもに対してこんな気持ちですといった話をお聞きした時は、とても嬉しかったです。
――最後に、今後の作品制作について教えてください。
コロナ感染症が終息したら、撮りかけているテーマでもある、イギリスの樹木のシリーズを冬の積雪の時期に撮影したいという思いがあります。またお客様からいただくご意見は、今後の作品制作について考える上でとても刺激になっています。会場で皆様とお話できることを楽しみにしております!
本展の作品からは、河田さんの見る側への温かな視線や、柔和な人柄がひしひしと伝わってきます。ぜひ会場へ足をお運びください。
※ソニーイメージングギャラリー 銀座では、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、マスクの着用と備え付けの消毒液による、入館前の手指の消毒が実施されております。また、混雑緩和のため入館制限を実施させていただく場合もございますので、余裕をもってお出かけください。
【河田 美奈枝 作品展「Dreaming Planet」】
会場: ソニーイメージングギャラリー 銀座
会期:2020年7月24日(金) 〜 2020年8月6日(木)
11:00〜18:00
https://www.sony.co.jp/united/imaging/gallery/detail/200724/
河田さんWEBサイト
https://www.minaekawada.com/
Instagram
https://www.instagram.com/miko_wonderland/