石塚 公昭 写真展「石塚公昭幻想写真展-生き続ける作家たち-」

レポート / 2018年8月15日

~現実感と非現実感の世界のあわい。現実と幻想が混在する作品の魅力~

会場にて、石塚さん

ギャラリーへのエレベーターを降りると、大きく引き伸ばされた怪人20面相に扮した江戸川乱歩の写真にむかえられ、小学生の時に夢中で読んだあの物語世界に一気に引き込まれるような感覚におちいります。小説の場面に作家自身が登場することはあり得ない、その虚構の世界がリアルな実在感をもって見る人に迫ってくるように感じました。

写真家であり人形作家である石塚公昭さんに、制作した人形を使った作品世界を撮られるようになったきっかけについてお伺いしました。
「はじめは黒人のジャズミュージシャンの人形を作っていて、その人形を使って写真を撮って展示をしたら実写と間違えられてしまって。ジャズの写真は本物がたくさんあるじゃないですか。それをわざわざ人形を作って再現するのは面白くないなと思い、作り物でしかできないものはないかと考えていたときに、屋根裏に潜む江戸川乱歩の絵が浮かびました。当然本人はそういうことをするわけはないですから、書斎の作家とかではなく、その人の作品世界にいるところを作ればというのがきっかけです」。

多くの文学作家たちを使った作品を作っていらっしゃいますが、作家を選ばれる基準について、「好きであるというのが一番ですけど、作りたくなる顔かどうかですね。最近は作りたくなるような作家も少なくなってきた」とのこと。

展示されている江戸川乱歩の人形

昨年は立体から陰影を消して撮ってみると面白いのではと、三遊亭圓朝の「牡丹灯籠」、葛飾北斎の「蛸と海女」など、日本画的作品を作られたとお聞きしました。浮世絵や日本画の陰影がないからこその魅力を、陰影があるものという前提の立体物(人形)を作られる石塚さんが写真作品に表現されるのは、お聞きしても大変興味をかき立てられました。今後はまったく空想の世界を作ってみたいとのこと。

今回の展示では石塚さんの作家シリーズのモノクロ作品を中心に44点が展示されています。文学作家たちの作品世界に迷い込んだような幻想世界の実在を感じに、ぜひ会場へ足をお運びください。

表紙を担当されていた都営地下鉄のフリーペーパー「中央公論Adagio」
この表紙に使われた作品も展示されています

会場では写真集とポストカードも販売されています

【石塚 公昭 写真展「石塚公昭幻想写真展-生き続ける作家たち-」】
会期:2018年7月25日(水)~9月2日(日)
11:00~19:00(最終日16:00まで)
会場:リコーイメージングスクエア銀座(火曜定休)
http://www.ricoh-imaging.co.jp/…/sched…/event_detail_54.html