~写真を介して再会する10年前の自分~
saorinさん 写真展「a fine line」が、10月25日(日)まで浅草橋駅から徒歩5分ほどのところにある写真企画室ホトリで開催されています。写真企画室ホトリは「旅と山、本と写真」がコンセプトのアトリエギャラリーです。
写真企画室ホトリの室長を務める、写真家のsaorinさん。“写真を形あるものに残そう”をテーマに、ホトリ写真塾と称した教室やワークショップの開催、写真公募展など、写真にまつわる様々な企画や運営に取り組まれています。
本展では、saorinさんが旅先で見つけた一風変わった光景の数々が展示されています。それらの作品は、10年ほど前に私家版写真集としてまとめたテーマでもあるとのことです。10年の時を経てなぜ今、本作を展示するに至ったのか。個展「walk around with him」から約1年半振りに、saorinさんにお話を伺いました。
「美しいものと汚いもの。ベクトルは違えども、それらを見つけたときの感情の根っこの部分は同じだと思うんです」
餌に群がるおびただしい数の鯉、白い壁に同化する蛙、瓦礫の山の上にひっそりと佇む烏。これらの作品には、明確な美しさや万人受けする要素はありませんが、鑑賞者を惹きつける何かが存在します。saorinさんご自身も、これらの光景になぜこんなにも惹かれるのか分からないと語られます。
「見方を変えれば面白いとも言えますが、一般的には醜い部類に入るものばかり。ですが、心のどこかでそれらを美しいと感じる自分もいるように感じられたのです。美醜の基準は主観的なものですし、被写体が陰でも陽でも、撮影者の心が動いたときの感情の根っこの部分は同じだと思います」
「10年前の自分と今の自分との違いを見てみたくなった」
展示作品を選ばれる中で、自身の10年間を見つめ直す機会も得られたとのこと。この10年間には人生に大きな影響を与えた出来事があり、また今年は世界中でコロナ感染症が流行し、先の見えない日々もあったと振り返ります。その中で、少しずつ自身にも変化が見受けられたとsaorinさんは語ります。
「本作の被写体と再び出会えたとして、わたしはまた同じようにシャッターを押すのか。そもそもこれらを見つけるに至るのか。撮りためた作品を見返す中で、そんな疑問が生じました。だからこそ写真を介して、10年前の自分と今の自分との違いを見てみたくなったのです。過去の被写体を辿っていくと、当時の自分が何に興味関心を向けていたのかが浮き彫りになりました」
本展のタイトル「a fine line」の意味は「紙一重」。美しさと汚さ。saorinさんが切り取る光景の数々は、対極に位置するそれらに潜む共通項を垣間見せます。そしてその矛盾は、わたしたちが生きるこの世界にも見出されるとsaorinさんは言います。
「この世界は理不尽で不条理。そして同時に、不可解で美しいとも思うのです。私はこの世の不条理な醜さと同時に、そこはかとない美しさをとらえたくて、写真を撮っているのかもしれません」
本展期間中、会場では「写真の残しかたワークショップ」も開催されています。(要予約・3日前まで) 半透明アクリルパネルやレイヤードコラージュパネルを使用し、大切なお写真をカタチとして残すことができますので、ぜひ作品とともに会場でお楽しみください!
【saorin 写真展 「a fine line」】
会場:写真企画室ホトリ
会期:2020年10月17日(土) 〜 2020年10月25日(日)
13:00〜19:00
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