加藤 直子 写真展「サンクチュアリ~a chainless soul~」

レポート / 2020年10月29日

~魂が駆ける雄大なアフリカ~

会場にて、加藤さん。

約30年間タイムキーパーとしてテレビ番組制作に携わった後、 2010年から本格的に写真を始められた加藤さん。本展ではアフリカ・ケニアの雄大な自然の中で生きる動物たちの姿や、その営みをとらえた作品が展示されています。大迫力の大型写真の数々からはアフリカの大地の広大さ、砂塵をともなった温かな風、動物たちの息遣いまでもが感じられるようです。

「サミーがいなければ、出会えなかった景色がたくさんあります」

加藤さんがアフリカ・ケニアの地へ足を踏み入れたきっかけは、2013年に参加された写真家・井村淳氏主宰の動物撮影ツアー。その後、2019年秋までに計17回もアフリカの地を訪れているとのこと。アフリカの何が、そこまで加藤さんを惹きつけるのか。そこには2つの理由があると加藤さんは話されます。

「まず、現地ガイドを務めるマサイ族のサミーの存在です。最初の頃はツアーに参加をして撮影を行っていましたが、サミーと出会ってからは彼に直接プランを組んでもらうようになりました。時を同じくして、英米の写真愛好家との出会いもあり、彼女たちそれぞれと毎年2週間ずつアフリカを訪れるようになりました」

加藤さんから全幅の信頼を寄せられているサミーさん。さぞかし経験豊富なベテランガイドかと思えば、「彼より経験豊富なガイドは他にもいますよ」と、加藤さん。では、他のガイドにはないサミーさんの魅力とは?

「彼は誰よりも勘がいいんです!わたしたちが撮影を行う場所は、車から降りて撮影を行うことができない危険地帯ばかり。だからこそ、ガイドが車を停める位置や向き、タイミングなどは撮影において非常に重要なのですが、サミーの判断はいつも絶妙です。また、わたしたちの撮影の好みまで熟知しています。例えば、わたしが逆光の撮影を好むことを考慮した上でプランを組んでくれたり。サミーがいなければ、出会えなかった景色がたくさんあります」

こちらの1枚も加藤さんがシルエットの撮影を好むことを踏まえてサミーさんがプランを立て、撮影されたとのこと。「日の出や日の入りを撮りたがるのは日本人特有だそうです。日本人は太陽を撮りたがる人が多いとサミーから聞きました」と、加藤さん。

死ぬときはアフリカの空の下で死にたい」

「アフリカに惹かれるもう一つの理由は、空の広さです。わたしは東京で生まれ育ったので、何も遮るものがないアフリカの空に圧倒されました。こんなにも広い空を見てしまったら、細かいことは気にならなくなりますね」と、加藤さんは話されます。

アフリカへ訪れるようになってからの6年間には、ご両親やご友人など身近な人との別れ、ご自身の病など、人生の残り時間について考えさせられる機会が多くあったとのこと。

「人はいずれ死ぬということが現実味を帯びてきたのです。先のことは分からないからこそ、やりたいことからやっておかなくてはと思ったとき、真っ先に頭に浮かんだのはアフリカの空でした。以前までであれば、人目を気にして自分の生きたいようには生きれなかったと思います。ですが、今のわたしは誰に何を言われても、行きたいときにアフリカへ行きます(笑) 」

わたしの魂はアフリカの荒野を駆ける」

本展のタイトル「サンクチュアリ」には、「保護区域」という意味があります。「動物たちの「保護区域」と、もう一つの意味「聖域」をかけてタイトルとしました」と、加藤さん。

また副題である「~a chainless soul~」は、2007年NHK総合で放送されたドラマ『ハゲタカ』のエンディングテーマ “ROAD TO REBIRTH 〜 a Chainless Soul”(tomo the tomo)に由来するとのこと。

「歌詞の中の「私の心はそっとこのままにして自由をください」という一節に、自身の人生が重なったんです。わたしの魂は何者にも束縛されませんし、いつでもアフリカの荒野を駆けています」

本展の開催は、いくつもの幸運な偶然により実現されたとも加藤さんは語ります。「本年6月にRoonee 247 Fine Artsで個展を開催し、6年間撮りためた作品を初めて展示しました。その展示を富士フイルムクリエイトの方が観に来て下さり、「富士フォトギャラリー銀座でも是非開催して欲しい!」と、嬉しいお言葉をいただき、本展開催に至りました」

また本展では、アーティスト・木下晃希さんとのコラボレーション展示も開催されています。幼い頃から絵を描くことが好きで、毎日動物の絵を描いて育ったという木下さん。木下さんは、加藤さんのご友人で写真家のユマ キノシタさんの甥にあたるとのこと。ユマ キノシタさんがプレゼントされた加藤さんの写真集からインスピレーションを受け、展示作品を手掛けたのだそうです。

「わたしの写真集をいたく気に入ってくれて、作品を続々と描いてくれたんです。眠るときまで大事そうに写真集を枕元に置いていたと聞いたときには、写真家冥利に尽きました。晃希さんとの出会いこそがセレンディピティ!絵画や写真というジャンルの垣根を超えて、一緒に本展を作り上げることができて嬉しく思います」

「どれも本当に素敵な作品!例えば、サイの絵は一筆書きで1時間半ほどで描き上げたのだそうですよ。口元の描写が愛らしいんです!」と、嬉しそうに語られる加藤さん。

木下さんがインスピレーションを受けた加藤さんの作品も併せて展示されています。

いくつもの幸運な巡り合わせにより開催された本展。それらは決して偶然の産物などではなく、被写体である動物たちや撮影仲間、そして周囲の人々と真摯に向き合う加藤さんの人柄がもたらした幸運なのだと思います。アフリカの雄大な自然や、動物たちが放つ生命力をぜひ会場で体感してみてください!

会場では、本作の写真集『Sanctuary』や美しいポストカードをお買い求めいただけます。展示と併せてぜひご覧ください!

ステートメント

【加藤 直子 写真展「サンクチュアリ~a chainless soul~」】
会期:2020年10月23日(金)~10月29日(木)
平日 10:30~19:00
土日 11:00~17:00(最終日14:00まで)
会場:富士フォトギャラリー銀座
http://www.prolab-create.jp/gallery/ginza/

加藤さん WEBサイト https://naokokato.com/