堀田 純 写真展「微笑」

レポート / 2020年12月1日

~本当の豊かさとは何だろう?微笑みが示唆する1つの形~

会場にて、堀田さん。

堀田 純さん 写真展「微笑」が、12月2日(水)までアイデムフォトギャラリー シリウスで開催されています。堀田さんは、2018年に集団獏へ所属されたことをきっかけに、本格的に作品制作を始められました。スナップ撮影を得意とされ、本年3月には地元・板橋区と勤務地である横浜市までの通勤路にて、行き交う人々の日常を切り取った写真集『家路』(PHOTO STREET)を出版されました。

本展はタイ中部の都市・アユタヤの人々と、その営みをとらえた作品で構成されています。被写体は皆一様にとろけるような無防備な笑顔を湛えており、その表情は鑑賞者の心まで自然とほぐします。

「『微笑みの国・タイ』というキャッチコピーは有名かと思いますが、アユタヤで暮らす人々は実際によく笑う人たちばかり。「微笑みの国」は、実在するのだなと実感しました」と、堀田さんは話されます。アユタヤの人々と写真を介して、交流を重ねる中で得た気付きとは。そして、彼らの姿から見出された本当の「豊かさ」について、堀田さんにお話を伺いました。

撮影者である私がマイノリティ、被写体である彼らがマジョリティ

本作はアユタヤの住宅街で1週間ほどかけて撮影されました。その間に撮影した人数は100人を超えていたそうですが、そのうち撮影を断れられたのは10人にも満たなかったとのこと。また朝食時に撮影を行えば、ご飯のおすそ分けでお腹が一杯になることが多々あったりと、現地の人々の寛容な対応が印象的であったと堀田さんはいいます。

「被写体の生活圏で撮影を行ったので、立場的には撮影者である私がマイノリティであり、彼らがマジョリティ。だからこそ彼らの気持ちに余裕が生まれた部分はあったかと思いますが、その寛容さは日本におけるスナップ撮影との大きな違いでもありました。東京での撮影は精神的に疲れることも多く、気乗りしないまま撮影に向かうこともありました。ですが、本作の撮影は心から楽しかったです!」

家と外との境目があまりないタイの住宅構造も、本作の撮影においてプラスに働いたと堀田さんはいいます。「暑い国なので開放的な住まいが多く、撮影しながらいつの間にかお宅に上がり込んでいたこともありました。そんな距離感からも、タイの人々の国民性を感じましたね」

一生懸命生きている人が好きなんです

本展の1番の見どころは、なんといってもアユタヤの人々の温かな微笑み。「人付き合いは苦手なんです」と堀田さんは話されますが、ではいかにして、彼らの自然な表情を引き出すことが出来たのでしょうか。

「精神的な違和感を抱かせないために、相手と同じ土俵に立つことを心がけていました。なので本作の撮影時は、サンダルに半ズボンといったシンプルな服装で臨みました。また、彼らの生き方に共感する気持ちがわたしの表情や佇まいからにじみ出ていた部分も影響していたかと思います。彼らのように一生懸命生きている人が好きなんです」

写真は言葉を用いないコミュニケーション手段であるからこそ、自身との親和性が高いと堀田さんはいいます。「誰かと一緒に居て時間を持て余した時、それを会話で埋めることが苦手です。でも写真ならば、言葉がなくてもコミュニケーションが成立すると思うのです。撮影は一瞬ですが、そこからは相手の性格や心の機微など多くのことが伝わると感じます」

アユタヤの人々から垣間見えた「豊かさ」の本質

また、アユタヤの人々と交流を重ねる中で、「豊かさ」の本質を垣間見たと堀田さんはいいます。

「物質的な豊かさでは、日本に及ばないことは事実です。ですが彼らの表情から日本とは異なる豊かさを感じるのです。では、わたしたちとアユタヤの人たちとの違いとは何か。それは、生きる目的が明確化しているかどうかだと思うのです。例えば、私たちが必要なお金はいくらでしょうか?分からないからこそ欲求は際限なく生じますし、気付けばマネーゲームのようにスコアが高い方が偉いと錯覚してしまう。また、そのスコアを何に使うのかという部分が抜けているのです。つまり、手段が目的化しているのですね。一方で、アユタヤの人々の生活は結果としてシンプル。お金や物に惑わされる余地が少ないのかもしれませんが、やはり彼らの価値観が大きく影響していると思います。豊かさの基準は一様ではなく、異なる指標の豊かさのバランスを探ることが大切で、幸か不幸かを判断するのは自分自身だと気づきました」

GDP世界第三位の国である日本は、お金や物質的な面では「豊か」であると言えますが、それらが必ずしもわたしたちの心を満たしてくれるとは言い切れません。一人ひとり異なる人生経験や多様な価値観を持つように、「豊かさ」の定義も人によって異なります。だからこそ、自分自身や社会、そして次世代にとって真に必要な「豊かさ」とは何かということについて、本展を通して、思いを巡らせる機会を持たれてみてはいかがでしょうか。

ステートメント

※1「集団獏」:写真団体。1996年写友「風」という名称で発足。2000年代前半は日本カメラ、アサヒカメラ等写真雑誌の月例コンテストを楽しみ2000年代後半からはグループ展及びメンバーの個展を中心に展示活動に移行。2016年20年目をむかえアマチュアの写真家だけでなく安掛正仁氏、溝口良夫氏、黒柳昌樹氏らプロとして活動している写真家も加えさらに山口謡司氏ら書家作家も正式メンバーとして加わり集団「獏」として活動を開始。写真のみの展示にこだわらず、幅広い表現活動をめざす。(UP40GALLERY & SANISTA(サニースタジオ)WEBサイトより引用

【堀田 純 写真展 「微笑」】
会場:アイデムフォトギャラリー シリウス
会期:2020年11月26日(木) 〜 2020年12月2日(水) (日曜休館)
10:00〜18:00(最終日15:00終了)
https://www.photo-sirius.net/tenji/%e5%a0%80%e7%94%b0-%e7%b4%94%e3%80%80%e5%86%99%e7%9c%9f%e5%b1%95/

堀田さん Facebook
https://www.facebook.com/manis.drian

集団獏 WEBサイト
http://syudan-baku.net/