喜多 研一 写真展「GROUND RESUME Ⅲ」

レポート / 2020年12月3日

~常に変容している東京という街への好奇心が湧き出る写真展~

会期は12月13日までの金土日の週末に開場されており、喜多さんは全日在廊されています。
この夏に撮られたものをメインに、 28点の作品が展示されています。コロナの影響もあり回数を通えない分、1回1回を凝縮・集中されての撮影、歩行距離も今までの倍とのこと(笑)
興味や疑問等あれば、どんどん話かけてください、と喜多さん。

「GROUND RESUME」土地の履歴書という意味を持つタイトルの写真展の第三弾。1回目の写真展はこちらでもご紹介しています。

ー今回撮られたところについて教えてください。

作品の原点は昭和7年に制定された東京市35区で、ロケーション的には今までと違う場所を撮影しました。生まれた場所である蒲田エリア、細かく言いますと蒲田から六郷土手~羽田方面、品川から東海道沿い。それと友人にすすめられた目黒、文京エリアなどです。

ー展示の際に気を付けられたこと、特徴などを教えてください。

あまり地域ごとという観点では分けてなくて導入は少し優しめに、入口入って正面の壁、特に左から6、8点は強めの作品を展示しています。一般的には最初に強い作品をもってくることが多いのですが、空間(会場のスペース)的なこともあり、見た人が楽しんでもらえる構成を意識しました。

ー旧東京市というくくりの中で、土地の成り立ちや移り変わりといった要素がたくさんあると思うのですが、どういったプロセスで撮られているのでしょうか。

初期の頃は事前に地図情報を丹念に調べ、この辺りを歩こうと決め撮っていくというスタイルでしたが、今回はそういった枠組みを取っ払い、行ってみたいところに行って撮るということにしました。理由はいくつかあり、自然災害などによる変容の可能性もあって、撮りたいところを先に撮っておかないと、このプロジェクト自体続けていけなくなると考えたためです。特に蒲田は自分が生まれたところという思い入れがあり、プリミティブに撮ったという感じですね。

ーあらためて蒲田に行かれて、何か感じたことなどはありますか?

住んでいたのは5歳半まででという記憶としてもあいまいなもので、がっかりするかもしれないと思っていましたが、いざ行ってみるとすんなり楽しめましたし、ストレートに撮ることができましたね。

ーつい撮ってしまうような何かはあったりしますか?

ありますね。生まれ育った蒲田の、雑然とした街の中で子どもたちが泥んこになって遊ぶといった、昭和(懐かしさ)のイメージみたいなものが、個人的な意思で影響していると思います。ただプロジェクト的には、ニュートラルに情緒感をださないようなプリントを心がけています。なので、そこは自分の中で切り分けて表現するようにしています。他人(作家の情緒的なもの)が介在する隙間がなければないほど、あえてフラットにした方がお客様の人生観につながりやすいというのが、今までの写真展(同シリーズの1~2回の写真展)でのお客様からの反応でそう感じています。

ー東京自体、国際的大都市であり日本の首都として、人々のなかにイメージが先行しているので、こういった作品を見るとまた意識が変わるような気がしますね。

そうだと思います。日本というものをイメージされる時に東京がよく取り上げられるので、特に海外の方がこちらを見られると、(東京の)一面性だけでなくいろいろな面を知ってもらえるのではと思っています。

いろいろと(見たお客様から)お話を伺っていくことで、次の撮影のための糧になりますし、コミュニケーションが写真でできるというのが、一番おもしろいと思っています。
今回(3回目となる「 GROUND RESUME 」)は原点である場所(蒲田)を撮ったということも含めて重要な意味をもつ回ですし、今後のプリントの方向性の指標になると思います。みなさまの反応を知ることで、あらためて自分の中への問いかけもできたらと考えています 、と喜多さん。
2021年(来年)夏には、このシリーズをまとめての写真展を予定されているとお聞きしました。それを拝見するのが今から楽しみです。

防災の観点からも土地の来歴・履歴への興味は以前に比べて高まってきています。作品には三角地や土地の高低差、階段のある坂、昭和の懐かしい建物といったものが切り撮られ、それらからは時が凝縮したような静けさが感じられます。今東京の街の駅前はどこも同じ街化しているように感じることが多々ですが、撮られた作品はどれも同じ東京!?と。作品の細部を見れば見るほどおもしろい写真展です。

芳名帳に、「お名前」と送付先の「ご住所」を記載いただいた皆様に限定で先着40名様"GROUND RESUME"のZINE(小冊子)をお送りしておりますとのこと。 週末の予定にぜひ足をお運びください!

会場では、写真集『GROUND RESUME』が来場者特価で販売されています。

喜多さんのはじめての作品シリーズ「枯れない街」も会場で見ることができます。写真家になる前のサラリーマン時代から好きすぎて通いつめていたという中野駅北口(中野5丁目)を撮られたもの。お店がどんどん入れかわっていく中、店は変われど街の雰囲気が変わらないということに惹かれ撮りはじめたとのこと。それが今の「GROUND RESUME」のきっかけになりましたとお聞きしました。

【喜多 研一 写真展「GROUND RESUME Ⅲ」】
会場:ギャラリーヨクト
会期:2020年11月20日~12月13日
(金曜/土曜/日曜のみ開場)
13:00~19:00
http://yocto.webcrow.jp/
http://blog.livedoor.jp/galleryyocto/archives/26753678.html

喜多さん Facebook
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喜多さん Twitter
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