キセキ ミチコ 写真展 「続・A complicated city」

レポート / 2021年1月21日

~2021年の香港のために今、出来ることとは?「写真」の可能性に託した想い~

会場にて、キセキさん。

キセキ ミチコさん 写真展 「続・A complicated city」が、2月18日(木)まで 東京堂書店 神田神保町店にて開催されています。音楽を中心に、ドキュメンタリー、ファッションなどの撮影を手掛ける、写真家のキセキさん。2019年7月から約8か月間香港に滞在し、現地で目の当たりにした香港民主化デモを最前線で追い続けました。

その後、2019年12月に一時帰国し、ギャラリー・ルデコで「2019年 香港 私の悲しみと祈り #まずは知るだけでいい展」を開催。デモ隊の若者たちに対する非人道的な行いへの悲しみと、これ以上彼らが傷ついて欲しくないという祈りを込めた写真展は大きな反響を呼びました。そして、2020年12月には、ギャラリー・ニエプスで「A complicated city」を開催。本展はその続編にあたります。

キセキさんの目線で切り取られた「2019年の香港」を見つめながら、本展にかける思いと写真家としてのこれからについて、お話いただきました。

1階のPaperBackCafe内の展示スペースでは、上段にデモ、下段に香港の日常をとらえた写真が展示されています。

――東京堂書店で本展を開催された経緯について教えてください。

東京堂書店の香港関連の書籍フェア「激動の香港を考える」をSNSで知ったことがきっかけです。そこで、2019年香港デモの最前線を記録したオリジナルミニ写真集『the STRONG will in HK』の営業に伺ったところ、ご厚意によりサンプルとして写真集を展示させていただくことになりました。また有難いことに、写真展の開催もご提案いただきまして、本展の開催に至ったんです。

――タイトルに「続」とある通り、昨年12月の写真展 「A complicated city」 の続編とのことですが、前回とは全て異なる写真で構成されているのですね。

前回と同様に、デモの現場と香港の日常をとらえた写真で構成しましたが、内容は一新しました。書店という場所柄、私の写真や香港の現状について知らない方々にも本展をご覧いただけるというメリットがある反面、私が常に在駐しているわけではないので、必ずしも展示の説明が出来ないことや写真の管理についての懸念点がありました。それらの事情を踏まえ、あまりにも過激なデモの様子や偏った思想が入っているもの、デモ隊の人々の顔がはっきりと写っている写真などは展示を控えました。

――写真はとらえ方次第でいかようにも解釈できるからこそ、その扱いには注意が必要ということですね。

そうですね。自身の手から離れた場所で展示する際には、鑑賞者に与える影響力を考慮した上で写真をセレクトすることが重要だと思います。とはいえ、1点1点の写真には撮影時に肌で感じた現地の空気、音、匂いなど、写っていない部分にも自身の記憶が確実に存在しているものなので、客観的にセレクトするのは難しいことも事実です。

本展のデモの写真は、現場の状況をとらえたもので構成されたのだそう。「改めて見返すと、2019年の香港に自分も存在していたのだという事実が信じ難いです」と、キセキさん。香港の人々とともに激動の2019年を生き抜いたキセキさんだからこそ、写せた光景の数々が本展にはありました。

――本展をきっかけに香港に関心を持った方が、書籍からも情報を得られる環境が整っているという点も、書店で写真展を開催するメリットの1つですね。

やはり写真だけでは全てを伝えることは難しいですし、書籍を読むことでしか得られない気付きもたくさんあります。その点、東京堂書店には普段から香港関連の書籍が充実しており、現在は「香港・台湾フェア」も開催中なので、ぜひ書籍にも目を向けて欲しいです。何かを知ろうとすると労力やお金もかかり意外と大変なので、知ることを後回しにしてしまう人も多いのではないかと思います。

2階から3階へと続く階段の壁面でも、キセキさんの写真が展示されています。また3階では、「香港・台湾フェア」が開催中!

――私たちの日常生活では、知らず知らずのうちに様々な情報が流れてくるので、自分で情報を求めに行くという機会は減っているのかもしれませんね。

そうですね。ですが、受け身で得た情報は簡単に忘れてしまうものだと思います。その反面、自分で行動して得た情報は実体験として記憶されるので、そこには大きな差があります。緊急事態宣言下なので、本展の開催についてもだいぶ悩みましたが、写真展に足を運ぶことで得られる気付きを失って欲しくないという思いで開催続行を決めました。とはいえ、皆さんが置かれている状況は実に様々なので本展の告知を行うこと自体、心苦しかったことも事実。今回は、無理のない範囲で見に来ていただけると嬉しいです。

3階の「香港・台湾フェア」では、様々な関連書籍が集結しており圧巻!香港はもちろんのこと、世界で起こっている様々なことはまずは知ることが、より良い未来を選び取る上で重要です。そのための環境が、東京堂書店には整っています!

――前回の展示から本展までの約1か月の間にも、香港では「香港国家安全維持法」にもとづき民主派の政治家・活動家の多数逮捕など、日々変化にさらされ続けていますよね。

コロナ禍で海外メディアも干渉できない状況なので、より一層、民主派の排除が加速しているように感じます。また私自身も、香港で暮らす友人や香港に詳しい人たちから話は聞いていますが、人づてに得た情報では正確なことが言えないので、どんどん香港について発信しづらい状況に陥っています。

――現地で見聞きした言葉と日本で得た言葉とでは、やはり重みが異なるのでしょうね。

全く違います。2019年に香港に滞在していた時は、みんなでご飯を食べたり、日常のちょっとした会話の中で相手がポロっとこぼした言葉がとても重かった。私自身、そんな些細な言葉の蓄積で情報を得ていたんです。しかし今は、あえて「最近の香港はどう?」と尋ねないと現状を知ることすら出来ませんし、このような改まった質問を投げかけると相手も色々と考えてから発言するので、今までの言葉とは異なりますよね。

――そういった日常の中の言葉にこそ、香港の人々が置かれている現状や、その本質が詰まっていたのでしょうね。

そうなんです。なので現地に駆けつけられないこの現状が、もどかしくて仕方ありません。そして、この状況下で私には何が出来るのだろうかと考えたとき、やはりそれは写真で香港の状況を伝え続けることだとも思いました。コロナ禍により、誰もが自分のことで手一杯な時期だとは思いますが、香港もまた窮地に立たされていることには変わりありません。だからこそ本展の開催を通して、1人でも多くの方が香港について思いを巡らせるきっかけを作りたいのです。写真というメディアには、それだけの可能性が秘められていると思うので。

※新型コロナウイルス感染拡大防止への対応として、営業時間が変更になる可能性がございます。ご来場される際には、東京堂書店のホームページをご確認下さい。

■会場では、オリジナルミニ写真集『the STRONG will in HK』、私家版写真集『DRYNESS』もご覧いただけます。現在、写真展の開催を記念し、特別価格でお買い求めいただけますのでぜひチェックしてみてください!詳細はこちらからご覧ください。

ステートメント

【キセキミチコ 写真展 「続・A complicated city」】
会場:東京堂書店 神田神保町店
会期:2021年1月6日(水) 〜 2021年2月18日(木)
11:00~18:00(最終日は17:30まで)
東京堂書店営業時間 11:00〜19:00
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