山崎 弘義 写真展「CROSSROAD」

レポート / 2021年3月6日

~ 今その光景が存在しているかのようなリアルさに溢れたスナップ~

会場にて山崎さん。

2019年11月のギャラリーヨクトでの写真展「CROSSROAD」が、さらに広いオリンパスギャラリーにて開催されるとのことでお邪魔してきました。

会場中央のタペストリーでの展示は臨場感があり、まるで自分も山崎さんと一緒に街を歩いているような気持ちになります。

ー2019年に発売された同名写真集、こちらが出版されたきっかけなど教えてください。

本当は90年代に出版できれば良かったのですが、1998年頃から2004年の間に親の介護があり、作家として作品発表から離れていました。
その間に認知症を患った母と庭を日記的に撮影していた作品が、『DIARY ―母と庭の肖像―』になります。
そういった期間を挟み、昔撮ったものを出版するというきっかけがなくなっていたのですが、テーマとして撮り続けている越谷レイクタウンの写真展「Around LAKE TOWN」の会場に、昔撮った写真をファイルして置いていたら、「おもしろい」という声を多数いただき、もう一度まとめてみようという気持ちになりました。
その時点ですでに(撮ってから)20年以上が経ち、その作品への自分の見方も変わっていき、平成を振り返るという意味でも、平成初期に撮った作品を写真集と写真展という形で発表したいと思ったのがきっかけですね。

合計83点というボリュームのある展示。パノラマで撮影された作品の隅々までじっくり見ているといろいろな発見があり、時間が経つのも忘れます。

ー写真集に収録されていない作品も展示されていますか。

入っていないものも展示しています。写真集だとページをめくっていくことでストーリーが展開されますが、写真展は空間を使ってのことなので、セレクトする作品もそれぞれ違ってきます。
今回展示している大きな作品は当時にプリントしたもので、フレームに入った作品は去年プリントし直したものです。これは写真集を制作するにあたりベタ焼きを全て見直し、おもしろいと思ったものです。

大きいサイズの作品は、94年コニカギャラリー、96年にドイフォトプラザで展示した作品をそのまま使っています。その当時に見られた方は、タイムマシンでその時にもどったような錯覚を覚えると思います。ただ当時作品を見て感じたことと、今(2021年)見て感じることは大きく変わっていて、全く違う写真として認識していると思うんです。それは2年前にこちらの作品を展示したギャラリーヨクトで、来てくれた方からの感想を聞いて思いましたね。

こちらが写真集制作時に、山崎さん自身の見方が(撮影時と)変わったことで、新たにセレクトされた作品たち。

ーパノラマというフォーマットがおもしろいですね。

パノラマは普通に撮ると安定してしまい、構図がしっかりし過ぎてしまいますので、構図というよりも「瞬間」。これを意識してシャッターを押すようにしています。

あと外国の方に評判がいいです。昔の東京を知っているわけではないですし、何を感じているのか非常に興味深いです。作品には不思議なことに外国の方がほとんど写っていなくて、あまり街にはでていなかったのか、もう一度ベタ焼きを見直してみて考えてみたいと思っています。

山崎さんがとらえた90年代は、街のそこかしこに猥雑な雰囲気があふれ、懐かしさという郷愁だけではなく、偶然のドラマの数々に魅了されます。パノラマで撮られたことで、ダイナミックさに溢れたフラットな生々しさがあり、今その光景が存在しているかのようで、直視するのを少し躊躇わせるほど。
日々の生活の中、時代の変化は気づきにくいものですが、平成から令和で確実に変わっていることを目の当たりにし、自分の加齢とともにびっくりさせられます。この時代を知らない人にもぜひ見ていただきたい写真展です!

ステートメント

プロフィール

会場では 「Around LAKE TOWN」 のシリーズを一気に見ることができます。写真集『CROSSROAD』も会場にて特別価格で販売されていますので、こちらもぜひ!

【山崎 弘義 写真展「CROSSROAD」】
会期:2021年3月4日(木)~ 3月8日(月)
11:00~16:00(時短営業中)
会場:オリンパスギャラリー東京(火曜・水曜休館)
https://fotopus.com/showroom/index/detail/c/3194

山崎さんのWebサイト
http://yama.g.dgdg.jp/