~動物の姿から、不自然な檻にとらわれた現代社会を客観視する~
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閉じた扉に向かって手を広げるチンパンジー、金網の外をじっと見つめるトリ、コンクリートの上で何かを諦めたような表情のワニたち。檻の中からじっとこちらを見つめる動物園の動物たちの瞳は、何を伝えようとしているのでしょうか。
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写真は真実を切り撮る力があると、棚木晴子さん。写真学校の学生だった約30年前に、各地の動物園を訪れて撮影したそうです。当時は感覚で撮っていたけれど、今改めて向き合った作品には、うまく言葉にできなかったその時の自身の感情が写っていたと教えてくれました。
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「当時はとにかく外に出たかったんです。だから動物たちも動物園で飼われる状況を受け入れているように見えて、本能では外に出たいと思っているかもしれないと感じました。気持ちを言葉にする術がないだけ。人間も似ています。いじめやDVなどで心の中にすごく辛いことを抱えている人は、自分の置かれている状況に気づけなかったり、うまく気持ちを表に出せなかったりします。でも不自然な檻の中にいる自分を外から見る客観的な目があれば、変わろうとできるのではないでしょうか」
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作品の最後には、檻で囲まれた道を写した一枚の作品があります。作品のように現実社会もいろんなしがらみで雁字搦めなのかもしれませんが、人間は自らの意思で置かれている状況を変えることができる。そういう気づきを得られる力強い作品です。ぜひ会場へ足をお運びください。
【棚木 晴子 写真展「檻」】
会期:2019年3月14日(木)~3月19日(火)
12:00~20:00(最終日は17:00まで)
会場:Alt_Medium
http://altmedium.jp/