塚原 琢哉 写真展「国境ーポーランド国境を越えた国の日常」

レポート / 2019年3月12日

~国境の先に広がる東欧諸国の人々の日常と心の中を収めた作品~

会場にて、塚原さん。「22年間これらの国々を撮ってきて最終的に見えてきたことは、平和は求めるものであり、平和になった途端に自分が権力者になってしまうということ。〈祈りと戦争〉というテーマを考えるようになり、そういう目で見るとレンズを向けるところが違ってきます」と、塚原さん。平和は、求めている時が人々に熱気があり美しいのだと話してくれました。

塚原琢哉さんは、海外を地盤に活動する写真家です。塚原さんが初めてポーランドを訪れたのは1972年。ポーランドの画家の幻想的な作品に惹かれ、文化的背景に興味を持ったのがきっかけだそう。当時のポーランドを取り巻く東欧諸国は冷戦中のソビエトの管理下にあり、国境は厳しい監視が敷かれていました。塚原さんはポーランドから陸路で国境を越えて7カ国を巡ることを決意。22年以上にわたる「国境」の旅が始まりました。

教会の前に立つ大きな十字架に接吻する老女を写した作品(写真中央)と、首を落とされたマドンナ(聖母)像を写した作品(写真右)。

展示の始まりは、1970年代のポーランドから。どれも厳しい社会環境の中で撮られた貴重な作品です。撮影テーマとなった黒い聖母とは、ポーランドのヤスナ・グラ修道院にある、マリア像のイコン(絵画)のこと。

東欧革命についての歴史年表と、ポーランドを取り巻く東欧諸国の地図が掲載されています。塚原さんが巡ったのは、ポーランド、カリニングラード、リトアニア、ベラルーシ、ウクライナ、スロバキア、チェコ、ルーマニアの計8カ国です。

2フロアからなる会場には、ポーランドとポーランドを取り巻く7カ国を写した作品175点が展示されています。平和や自由を求め巡礼する人々の姿や、兵器工場の廃墟、貴族の墓、レーニン像、巡礼者が積み上げた十字架など。東欧革命という激動の時代の中で、塚原さんは平和、戦争、貧しさ、豊かさとは何かを常に考え続け、その答えが目の前に現れたと感じた瞬間にシャッターを切るそうです。そこには、教科書には書かれない歴史の生々しさと同時に、人々の日常や心の中が映り込んでいるように思います。

地下フロアの展示はウクライナから。美術館の館長の姿、がらんどうの教会など。

チェコの都市オストラバにある化学工場の廃墟など。撮影は比較的近年の2007年。

「写真家として歴史を知り、人の心の中を理解しなれければならないと考えています。ポーランドの人々にとって心の拠り所は、黒い聖母のイコン(絵画)。これを撮らなければポーランドの芸術や人々の心の中が見えないと考え、テーマに据えて撮影をしてきました。革命を経てポーランドは今や国が大きく変化しました。EUに加盟したことを平和というならば、人々は神への感謝を忘れ、芸術家は目的を失い荒んでしまっている。この先の未来を考えた時に、悩みが深みにはまるのではと思います」

自分はジャーナリストではないと、塚原さん。しかし歴史の中にいた者の責任として、これまで見てきたことすべてを記録に残したいと話してくれました。

会場では、展示作品のオリジナルプリントが販売されています。
完全受注生産なので、好きな作品を選んで注文してください。
また、塚原さんの写真集も展示販売されています。奥左から『遥かなる遠山郷』『サボテン幻想』『101のマドンナ』『銀の日記』『海原幻想』。

塚原さんは全日在廊予定されているそうです。ぜひ会場へ足を運び、塚原さんが22年以上かけて撮り続けた貴重な作品をご覧ください。

【塚原 琢哉 写真展「国境 ポーランド国境を越えた国の日常」】
会期:2019年3月7日(木)~3月17日(日)
11:00~18:30(最終日は17:30まで)
会場:ストライプハウスギャラリー M、Bフロア(会期中無休)
http://striped-house.com/

塚原さんのWebサイト
https://tact27.wixsite.com/takuya