中村 愼太郎 写真展「古書を撮る -WEBSTER’S INTERNATIONAL DICTIONARY 1894」

レポート / 2019年2月22日

~自然光の中で100年以上前の古書が見せる新しい表情~

会場にて、中村さん。「クリエイティブな表現としての僕の関わり方は、選択と光の当て方とトリミング。写真家でもあるけれど、デザイナーとしての職業的な視点が、作品に出ているかもしれない」と少し控えめ。周辺のものを撮るなら、スマートフォンの内蔵カメラの撮影能力で十分とのこと。カメラの機能や精度ではなく、切り取り方やものの見方の大切さを感じさせる作品です。

ギャラリー福果のオーナーでもある写真家の中村愼太郎さんは10数年前、古書店に並ぶノア・ウェブスターの辞典の雰囲気やボリュームに魅せられたそう。思い切って購入したもののずっと本棚の片隅で眠っていたこの古書を、再び開きページをめくりはじめたのは昨年のこと。そこには、辞典の枠に収まらない面白い世界が広がっていたと言います。

背表紙、見返し、巻頭のカラーページなど。さまざまな角度から古書を切り取っていきます。
自然の光がつくる陰影が、古書の魅力を引き立てています。

会場に並ぶのは、1冊の古書が見せる様々な表情を捉えた作品約50点。職人の手を感じる重厚な装丁、インク移りからうかがえる長い年月の経過、整然と並ぶ活字から伝わる鉛のかたまりの圧力、詳細に丁寧に描かれた図や挿絵などが、自然の光の中で静かに色づきます。

朝一番の光、夕方近い光、夏の強い日差し、曇りの日の優しい光など、何日もかけて様々な角度から撮影を繰り返したそうです。「おもしろがって見て、感じてもらえたら嬉しいです」と、中村さん。語り始めると尽きないと、様々な話をしてくれました。

「今回初めて古書をモチーフにしました。何日もかけて自然の光で撮影するうちに、新しい表情が浮かび上がってくる瞬間があります。デザイナーとして製版や印刷などに携わってきた経歴をもつ僕のフィルターを通して見た、100年以上前の古書の新しい表情を楽しんでください」

「今回はじめて古書をモチーフにしました。他の本でも僕なりの表現ができるのでは?と可能性を感じています」とのこと。医学的情報、生物学的情報、幾何学的情報、物理学的情報、さらには帆船の部位の解説など、様々な情報が網羅されている辞典だそうです。

撮り進めるうちに様々な気づきや発見があったと、中村さん。わざわざ遠くへ行かなくても、身近なところに目を向けると知らない世界や気づいていなかった世界が広がっているのだと話してくれました。

ぜひ会場に足を運び、自然光の中で表情を見せる古書の写真をお楽しみください。写真展を見た後は、周辺に並ぶ古書店へ繰り出してみるのも面白いかもしれません。

会場全景。
作品は全て展示販売されています。フレーム見本はA4サイズと、飾りやすいサイズ感です。
作品(5,000円)、フレーム(3,000円)。

【中村 愼太郎 写真展「古書を撮る -WEBSTER’S INTERNATIONAL DICTIONARY 1894」】
会期:2019年2月15日(金)~3月9日(土)
12:00~19:00(最終日は17:00まで)
会場:gallery 福果(日曜休廊)
http://gallery-fukka.com/