~濃密な黒と輝く光のコントラストに魅せられるモノクロームの銀塩プリント~
暗室作業の職人プリンターとしてアトリエ シャテーニュで活躍しながら、自身の作品づくりにも取り組む金子典子さん。「黒を大切に」という師匠の教えを受け継いだというモノクロームの銀塩プリント作品は、シンプルな表現ながら、濃密な黒が光の輝きや質感を引き出しています。
会場に並ぶ23点の作品に写っているのは、伊勢・出雲・熊野など古くから聖地として人々から崇められてきた土地。所縁のないこれらの地を巡るきっかけは、親の死だと金子さんは言います。
「肉体から離れた魂はどこへ行くのだろう、違う世界で元気にやっているだろうかと考えるようになりました。だからと言って答えが分かるわけではありませんが。見知らぬ土地を訪れて何かを感じたかったのと同時に、私が好きな写真を撮る姿をどこかから見て安心してくれるかなと思っています」
50ミリレンズの視界には、夜を照らす満月や艶やかに輝く神木の幹をはじめ、幻想的な水紋や滝、靄の立ち込めるしめやかな山、あるいは荒々しい波が押し寄せる海などが切り取られています。
水が好きなので無意識に水を撮影していると金子さん。一方で、水は油断するとあの世へ連れて行かれるような恐怖を感じるのだそう。
これからも自分が浄化されるような地を訪ね、そこで感じたものを大切にフィルムに残していきたいと語ってくれました。ぜひ会場へ足を運び、黒の深い階調を前に沈潜してみてはいかがでしょう。
【金子典子 写真展「光あれ」】
会期:2019年2月4日(月)〜2月17日(日)
13:00~19:00
会場:蒼穹舎
http://www.sokyusha.com/gallery/20190204_kaneko.html