佐藤 素子 写真展「La Resonancia」

レポート / 2019年1月30日

~自然の中で響きあい共鳴する様々な音・光・色~

会場にて、佐藤素子さん。「自然って、本当にこういう絵の具を散らしたような色をしているんですよね。作品を展示したことで、水彩や油彩などの絵を描いていた頃の色や透明感に戻ったような気がします」。

佐藤素子さんが写真を始めたのは数年前。植物画家だった父親の影響を受けて幼い頃から植物と接してきたこともあり、身近にある植物を近距離で撮影し始めたのだと言います。曼珠沙華を写した「La Follia」や蓮花を写した「Lachrimae Antiquae」などの写真集には、カラー作品の他に、美術を学んだ佐藤さんらしいエッチングのような質感のモノクロ作品なども収められています。

白樺が写り込んだ水面のツヤっとした表情、木々が重なるように密集した森の凹凸や奥行き、森の小道に差し込む柔らかい光など、光や色の質感が伝わってくる作品です。「絵画や絣(かすり)などの美術を通して様々なテクスチャに触れてきたこともあり、当初は触感のないツルッとした質感の写真が好きではなかったんです。でも、水彩に使う画用紙のような凹凸のある紙にプリントできることを知り、写真をするようになりました」と佐藤さん。使っているカメラレンズも、最後に職人さんが手作業で磨いて仕上げるオリンパス製だそうです。

一方で、佐藤さんはある時期から「色の響きあい」に視線が行くようになったそう。今回の展示では、淡い光と自然が溶け合うように重なり生まれた様々な色のグラデーションが表現されています。美しい色彩が生み出すのは、「共鳴」を意味するタイトル通り、まさにResonanciaな世界です。

「主役は光。でも晴れの日の生々しい光ではなく、曇りの日の色が良い感じに濁りあっている光が好きです。濁りは豊かさだと考えています。隣接する色が共鳴することで濁り、新しい色を作り出す。全ての命が響き地球と共鳴している姿に、自然はすごい!と思いました」

「有名なスポットは上手な方が撮るから、私は人が気づいていないかもしれないような普通の場所を写しています。素直に、私が出会わせてもらった素晴らしい瞬間を撮らせてもらっている」と佐藤さん。今回の展示を見に来た学生時代の友人たちとの会話から、色調や透明感など好きなものが変わってないことに気づいたそうです。

共鳴は作家と鑑賞者の間にも生まれるのだと、佐藤さんは言います。もしも佐藤さんの作品を観て「優しさ」や「透明感」などの感情を覚えたなら、それは鑑賞した人が従来持っている綺麗な感性かもしれません。

ステートメント
子供の頃から、人よりも植物と接する方が近しかったという佐藤さん。植物画家である父親の影響もあったようです。今も、街中でカメラを出すのも、人を撮ることも苦手だそうです。「写真を撮るようになって、出かけてみたくなったし、自分で何かを見つけたくなりました。人生かわるな」会場では、佐藤さんの写真集「La Follia」(2,000円)と「Lachrimae Antiquae」(3,000円)の他、展示作品も販売されています(現品限り)。

会場は、オリンパスギャラリー東京のメインギャラリーに隣接する壁面スペースです。わずか2面の小スペースながら、10点の作品それぞれが細部まで色の重なりを楽しめる、見応えのある展示です。2月3日(日)の15:00~15:40から会場にてトークイベントも行われるそうなので、ぜひ足を運び、自然の命が奏でる音・光・色を感じてみてはいかがでしょう。

【佐藤 素子 写真展「 La Resonancia」】
会期:2019年1月28日(月)~2月6日(水)
11:00~19:00(最終日は15:00まで)
会場:オリンパスプラザ東京 クリエイティブウォール(木曜休館)
https://fotopus.com/event_cam…/showroomgallery/detail/c/1663

トークイベントの詳細はこちらから
■東京■佐藤素子 写真展「La Resonancia」開催記念トーク
https://fotopus.com/event_cam…/showroomgallery/detail/c/1668

佐藤素子さんのWebサイト
https://www.motokosato.tokyo/