大木 靖子 写真展「ひとひら」

レポート / 2019年1月24日

~役目を終えてなお美しい植物の命の証(あかし)をとらえたピンホール作品~

会場にて、大木さん。「閃いたら新しいことをやるタイプです。現在は既存のシリーズの他に、ピンホールで自然風景の撮影をしています。風景だけど自分らしい世界観を出せればと思います」とのこと。気負わず自然体で、目の前の気になるものにカメラを向ける姿勢が、大木さんらしい表現につながっているのでしょうか。

星星峡は、多磨霊園駅・白糸台駅から徒歩約7分、甲州街道沿いにある、ショップとギャラリーを併設したカフェです。自身も写真作品を発表している舩橋直世さんが「ギャラリーの少ない府中市でアートを楽しめる場を作りたい」と昨年4月にオープン。カントリー調のおしゃれな店内で、ランチやカフェを楽しみながら写真などの展示を見れるとあって、女性客を中心に憩いの場となっています。

国内外で人気の針穴(ピンホール)写真家である大木靖子さん。作品づくりの根底にあるのは「自分の目で見ることのできない世界を見てみたい」という好奇心。液体の入ったグラス越しに見える光のキラメキを写した「グラスのなか」シリーズや、ペットボトル越しに流れる車窓風景を捉えた「ペットボトルと旅」シリーズなど、ピンホールに被写体を密着させることで通常の目では見えない光の屈折やゆらめきを集めた世界観が特徴です。
今回の展示「ひとひら」シリーズは、まさに好奇心のまま道端に落ちている葉や花びらを光に透かして見た世界を切り取ったもの。

落ちていた桜の花を使った作品。正面(左)と裏側(右)で、光や質感、雰囲気の違いが楽しめます。日の光を通した淡いピンク色が優しい作品です。

椿の花びら(左)と葉っぱ(右)を並べて展示。

入口付近の本棚にも、小さくプリントした作品が展示されています。色が密集することで、光に透けた葉脈などが際立ちます。特に緑の葉脈を写した作品は、夜空を横切る星の軌跡のようにも見えます。

「親の病を通して人の生き死にというものを考えるようになっていた2010年頃、ふと落ちている葉っぱに目が止まり、役目を終えた後も美しい姿を〈生きた証〉として残してみたいと思いました。ピンホールを塞ぐように葉や花びらを密着させ、その場の光に透かすように撮影することで、葉脈を流れる水の光や花びらの細かな粒子のキラメキが不思議な模様となって現れます。自然からのいただきものですね」

紅葉と緑葉を並べて展示。

会場には、「ひとひら」シリーズから桜や椿をモチーフにしている作品13点をセレクトして展示。カラーフィルムのピンホール写真ならではの柔らかな光の表現や、役目を終えてなお美しい姿で私たちの目を楽しませる植物の命の証を見て心を癒されたい方は、ぜひ会場へ足をお運びください。
15時頃まではランチのお客様が多いそうなので、ゆっくり見たい方は15時~17時のカフェタイムがオススメです。

椿の花と葉っぱ。
ものの見方や捉え方について大木さんに伺うと「大学でアラビア語を学び、中東の国へ行った経験が大きいかもしれません。日本の常識が全く通じない環境下で、絶対的な常識なんてないのだと肌で感じました。それ以来、ちょっと違う角度からものを見るようにしています。それが作品づくりにつながっているのかも」とのこと。

【大木 靖子 写真展「ひとひら」】
会期:2019年1月7日(月)~2月4日(月)
11:30~21:00(金・土・祝祭日前日は23:00まで)
会場:星星峡(水曜定休)
http://seiseikyo.com/
supported by Roonee 247 fine arts