~人のつながりを感じる、平成元年の中国スナップ~
写真を撮る時は、被写体と向き合うこと。時に怒鳴られたり笑われたりしても、しっかり被写体と向き合い、自分なりの対話をする。それがフォトグラファーとして活躍する広瀬明代さんのモットーだと言います。
展示されているのは、平成元年(1986)に訪れた中国・上海の街や人々を写したモノクロプリントです。奇しくも天安門事件の数カ月前だという貴重な写真には、どこか期待感を持った表情をしている人々や、穏やかな時が流れる街の様子が切り取られています。その後フォトグラファーの道へ踏み出した広瀬さんは、一貫して被写体と向き合ってきました。
ようやく暗室作業に取りかかれたのは2年前。現像液の中で浮かび上がる30年前の画像に記憶が呼び戻され、発表する意欲が再燃したと言います。その背景には、機械や技術に頼りすぎることで人と人との繋がりや身体感覚が希薄になった現代人に対して、広瀬さんが感じている危機感があるそうです。
「現像することで撮影する私に興味を持ち、親しげに目を合わせて話しかける人々の記憶を思い出しました。写真の中に写り込んだ、今と違う時間の流れや人々の余裕、心の豊かさなどは、私も含めて今の人たちが感じなければならないもの。人を思いやったり、人に思いを伝えたりといった対面でのコミュニケーションの大切さを、この写真から思い出してもらえると嬉しいです」
会場には、35mmフィルム約30本の中から厳選した43点が発表されています。ふくよかな女の子、気さくな表情で視線を合わせる男性、希望に満ちた仕事中の女性たちなど、国や時代は違えども、現代人が平成の30年間で見失った人の温もりの存在を感じられる写真展です。
貴重な作品を見に、ぜひ会場へ足をお運びください。
【広瀬 明代 写真展「遥かなる余韻 ー平成元年中国の旅ー」】
会期:2019年1月21日(月)~2月27日(日)
12:00~19:00
会場:Place M
http://www.placem.com/schedule/2019/20190121/190121.html