なかの まさき 写真展「サーミランド 極北のトナカイ狩り」

レポート / 2019年11月28日

~自然と共存してきたサーミが守る、生活と文化に迫る写真展~

会場にてなかのさん。
柵の中に追い込まれていくトナカイ、その姿は躍動感そのもの。

北欧の先住民族サーミたちによる、トナカイ遊牧の中でも重要な仕事であるポロエロトゥス(追い込み・選別・屠畜作業)をテーマにした写真展。

現代においてはトナカイ飼育のみで生計を立てるサーミ人は1割程度。トナカイ所有者の中には、普段の管理を委託し大切な行事であるポロエロトゥスに参加しているサーミの人もいるそう。 1頭でもトナカイを所有したいと願うのは、サーミにとってアイデンティティの証なのかもとのこと。

ーこれらの作品を撮られるきっかけについて教えてください。

「24年前になりますが、もともと水産関係の研究をしていて『サケと人との関わり』というテーマで、サーミのサケ・マス漁を見たいというのが、フィンランドに通い出したきっかけになります。
最初の目的がサケだったので主に夏の時期に行っていたのですが、秋に行く機会があり、はじめて行った年に知り合い、イナリ湖でも数少ない専業で漁を行うヨウニ・アイキオに、偶然にも着いたその日にポロエロトゥスが始まるから来ないかと誘われ、連れて行ってもらうことに。

サーミの人たちにトナカイを何頭持っていますか?という質問は、貯金をいくら持っていますか?と同じ意味があり大変失礼なことだそう。 20年以上交流があるイナリサーミの ヨウニ・アイキオ さんにも、それだけは聞けないし、聞いてもたぶん教えてくれない(笑)とのこと。

漁業や狩猟がサーミ本来の生業と言われ、一部のグループによりトナカイの遊牧が行われていたのが、18世紀にこの大規模な遊牧スタイルが確立し、今ではそれが有名になりサーミ=トナカイとなっています。本来はいろいろなグループが存在し、それぞれ生活様式や言葉も少しずつ異なっていることまでは、あまり知られていません。
もともと漁業からサーミを知ったのですが、現代のサーミを語る上で、トナカイの放牧は避けて通れないものなので、いつかきちんと見たいと思っていましたし、作品として発表したいという思いがずっとありました」。

ステートメント

なかのさんのプロフィール

今後の活動について、サーミだけでなく、フィンランドの中で一番多い少数民族であるロマの人たちも追っているというなかのさん。
「 サーミの先住民族としての権利回復はまだ十分なされておらず、いろいろな問題もはらんでいますが、ライフスタイルやルーツの違う人たちが、試行錯誤しながら共存しているという、フィンランドという国の在り方に非常に関心があります」とお聞きしました。

日本とフィンランドの外交関係樹立100周年というメモリアルイヤーに、ずっと追ってきたサーミの世界を発表したいという思いで実現した写真展。
ブームの流れで日本でも北欧自体広く知られるようになったけれど、サーミはまだまだ知られていない存在。これを機会に知ってもらえればとのこと。
サーミに伝わる伝統がはぐくんだ文化の一部でもある「ポロエロトゥス」。ぜひ会場へ足をお運びください!

【なかのまさき 写真展「サーミランド 極北のトナカイ狩り」】
会期:2019年11月25日(月)~12月1日(日)
12:00~19:00
会場:Place M
http://www.placem.com/schedule/2019/20191125/191125.html

なかのさんのWebサイト
http://nakanomasaki.com/