~あたたかさとユーモアをにじませるバクーの魅力を感じる作品の数々~
アゼルバイジャンと聞いて、隣国アルメニアとの紛争をニュースで見たことがあるという程度で、どの辺りにあるのかも曖昧です。あらためて調べてみて、旧ソ連邦に属し、ロシア、トルコ、イランといった地域の大国に囲まれたカスピ海沿岸に位置する国。隣国のジョージア(グルジア)、アルメニアと合わせて南コーカサス三国と呼ばれ、バクー油田をはじめとした天然資源が豊富で、近年の急速な経済発展もあり第2のドバイとの声も。
雑誌・広告での撮影での仕事の傍ら、世界を旅し作品を撮り続けている、写真家の萩原さんにお話を伺ってきました。
ー日本人には馴染みが薄い国ですが、撮影に行かれたきっかけなど教えてください。
もともと(自分は)年の四分の一は、ヨーロッパなど海外の生活や日常を撮影していて、そのヨーロッパよりもっと古いものが残っているという、アゼルバイジャンやアルメニア、ジョージアの南コーカサスの3ヶ国に興味を持ったのがきっかけですね。ガイドブックにも掲載されておらず、アジアなのかヨーロッパなのかという地理的な部分や、調べていくと日本とも関りが深い部分もあって、もっと知りたいと思うようになりました
ー実際に行かれたのはいつごろですか?
アゼルバイジャンには2019年の4月に行き、ジョージアには2016年、2020年と2度行っています。ジョージアとは、同じ旧ソ連なので似てはいますが、宗教や民族の違いなどもあり、トルコとの方が兄弟国とも言われ結びつきが強いです。2度目にジョージアに訪れたときは、はじめて行ったときよりも国が急成長していて、以前残っていたものも少なくなり、街はハイブリッド車のプリウスだらけになっていました(笑)それがアゼルバイジャンだと燃費が悪い旧ソ連時代からの車も多く、産油国だからこそ維持できるのかなと。そういった古い車たちが、人々の日々の生活に溶け込んでいるのも面白いです。
ー今行くと大分変化しているかもしれませんね。
そうですね。しかしジョージアと違い、アゼルバイジャンの場合は、一部の富裕層はどんどん投資活動をしていますが、大多数の国民は成長意欲も薄く、今まで通りののんびりとした生活をしている人が多いので、この2面性を維持していくのではと思っています。それが古いものが残り続けていく理由かなと感じますし、羨ましくもあります。
ー日本からは行きづらい印象がありますが…。
直行便はありませんが、以前に比べたら行きやすくなりましたし、 飛行機で行くと唯一日本人だけがビザが無料になります。それぐらい日本との関係は親密ですね。見えない部分で日本とつながっていますし、そのため日本でもアゼルバイジャンの人の生活を見てもらいたい、知ってもらいたいと思っています。
ー今のコロナ渦が落ちついたら行ってみたい、撮りに行きたいところはありますか?
4月から南アフリカのケープタウンにあるギャラリーで1ヵ月展示をするので、(おそらく行けませんが)それに行きたいですね。 タンザニアのザンジバル島を撮ったもので、2年前に公募で出させてもらった時にギャラリーのオーナーに見てもらい、面白いからやろうよと決まった写真展です。ケープタウンとザンジバル島は奴隷貿易の拠点という共通点もあり、そんな歴史的なつながりがあるザンジバル島に住む人たちの写真を、アフリカの人に見てもらいたいと思っています。国内外問わず、撮影に行った現地でも作家活動をしていけたらと思いますし、日本で撮ったものも今後発信していきたいですね。
アジアとヨーロッパの狭間という地形的位置にあるアゼルバイジャンの、中世・近代、未来への変貌とそれらが混在する魅力と、バクーに住む人々の日常のユーモアがある一瞬一瞬のMixは、私も思わず行きたくなるほど!ぜひご覧ください。
【萩原 昌晃 写真展「Baku」】
会期:2020年2月16日(火)~ 2020年2月28日(日)
12:00~19:00(日曜17:00迄)
会場:Jam Photo Gallery(月曜定休)
https://www.jamphotogallery.com/