榊原斎 写真展「LOST AND FOUND」

榊原斎 写真展「LOST AND FOUND」
榊原 斎
2024/10/22 ~ 2024/10/27
京都写真美術館 ギャラリー・ジャパネスク

京都写真美術館 ギャラリー・ジャパネスク 2階展示室にて、2024年10月22日(火)から10月27日(日)まで、榊原斎 写真展「LOST AND FOUND」を開催します。
※最終日は17:00まで

◎無料コンサート開催!
10/26(土) 16:30〜17:30
JAZZ ギタートリオライブ


6歳の頃、大好きな絵を描くことが嫌いになりました。

映像を紙の上に再現することは、まるで世界を手に入れられるほど感動的なことであったのに。

半世紀以上前の事ですが、それは折に触れてリアルに甦ります。

カメラとの出会いで、映像への興味が再燃するまでの数年間は、視覚記憶そのものが、空白に近いのです。

私の写真はそんな原体験を克服する事から始まっています。

子供の未分化な脳の働きや、左利きの矯正など、原因は様々でしょう、もしかすると、絵に対しての説明を問われたことがとてもいやだったのかもしれません。

そんな思いに1つの答えをくれた本が、テンプル・グランディンのVisual Thinkingでした。

言語思考に頼らない、精緻な記憶、細部まで正確に再現するシュミュレーション、視覚イメージを駆使した推測は、学習からではなく先天的に選択される能力であることを、科学的に検証した著書です。

自分の撮影スタイルが、言語思考のテーマや社会性から乖離している自覚は、以前からありました。

被写体も、草叢であったり、荒地や、小さな水源など、一般的な共感を得られるものとは違います。

不思議なことに、私は、こんな視覚情報から直接思考が広がっていくのです。

映像制作では、傍らにあってほんの少し変化もたらすもの、その姿を、デジタルカメラで、視覚思考者の脳内で起きる変化の様に、精緻に細部にわたって再現したいと思います。1つは複数画像からの再構成ですが、現時点でのレンズ、撮像素子の能力とアウトプットサイズ、当ギャラリーでの視覚距離を勘案してその構成を決定しています。そして、僅かな撮影時間差で起こる映像の歪みがもたらす違和感をほとんど認知できないレベルで内包させています。

展示に関しては、こうした内在的要素と、同じ画像のモノクロ映像を横長変形サイズ大判プリントで並べる事で、鑑賞者の視覚的揺らぎと身体性の覚醒を促したいと思います。

タイトルについて。

直訳では、遺失物取扱所ですが、物質的なものだけでなく、時間、空間などの喪失、そして新たな発見等への思いをのせています。

全ての作品は、2023年~2024年に撮影されています。

現在の身体性により近いもので展示構成しました。


作品写真:クリックで拡大