北海道新冠郡新冠町

産業編集センター 出版部
2025/04/11 ~ 2025/05/15
北海道新冠郡新冠町
【旅ブックスONLINE 写真紀行】
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8キロにわたり馬の放牧が見られる「サラブレッド銀座」
競馬は今、世界60カ国以上で行われていて、どこの国でも走っているのはほとんどがサラブレッドといわれる馬である。この言葉、昨今では馬だけでなく人間、特に政財界の二世などにも使われるが、果たしてサラブレッドとは、どのような馬のことを言うのか。調べてみると、時は18世紀の初め頃、競馬発祥の地イギリスで、イギリス在来種の牝馬にアラブ種の馬を交配した品種を競走馬として改良し、育てたのが始まりだそうである。サラブレッドという言葉は「純血」「完全に育て上げられた」といった意味で、加えて「連続して8代にわたりサラブレッドが交配された馬」が正式にサラブレッドと呼ばれるらしい。まさに濁りのない純血種なのである。
その特徴は、体高は160センチくらいで体重は400〜500キロ、頭が小さくスマートで美しい体形であること。毛の色は鹿毛か栗毛、黒鹿毛など。さらに時速60〜70キロで数分間走り続けられ、2000メートルを約2分で走ることができる。ともかく、ひたすら走るために改良され、育成された品種なのだ。ただしその分、持久力はあまりなく、性格は繊細で体も頑丈ではない、という弱みも併せ持っているといわれる。
さて、そんな彼らの日本におけるふるさとは、北海道である。日本のサラブレッドの生産頭数は年間約7500百頭といわれているが、そのうちの80%が北海道の日高産なのだ。そしてその日高地方の中でも「サラブレッドの町」として有名なのが、ここ新冠町。日本に競馬ブームを巻き起こした立役者といわれるハイセイコーをはじめ、トウカイテイオー、ナリタブライアンなど、歴史に残る数多くの名馬を生んできた。
トウカイテイオー、ナリタブライアンなど、歴史に残る数多くの名馬を生んできた。新冠町と馬との出会いは明治の初め。北海道開拓使長官の黒田清隆が設置した新冠牧馬場がのちに宮内省の御料牧場となり、本格的な馬の生産が始まった。当初は軍用馬や農耕馬が中心だったが、のちにサラブレッドの生産が始まり、戦後、御料牧場が解放されてからは、馬産専業農家も増え、やがて競走馬の一大生産地として全国に知られるようになった。
新冠は今も馬一色の町で、町を東西に走る道道二〇九号線の約8キロの道は「新冠サラブレッド銀座」と呼ばれ、道の両側にある牧場で放牧されている馬たちを見渡すことができる。初夏には、母馬と春に生まれた仔馬が一緒に草を喰むほのぼのとした光景が見られ、一年を通じて将来の名馬たちが広い牧場を自由に駆け回る勇姿が見られる。馬好きにはたまらない場所だが、特に馬好きでなくても、サラブレッドたちの美しさ、カッコよさには感動を覚えることウケアイである。
※『ふるさと再発見の旅 北海道』産業編集センター/編 より抜粋