高木 直之「fractale」インタビュー

2020年10月26日

高木直之 写真展「fractale」が京都写真美術館 ギャラリー・ジャパネスク1Fにて、2020年10月20日(火)から11月1日(日)まで行われているのでレポートをお届けします。

――幾何学的な形態を持った建築物などのモチーフを撮影しようと思ったきっかけをお聞かせください。

大正時代の版画家に小村雪岱(こむらせったい)という人がいて、幾何学的な線のようなイメージで、シンプルの中にある美をつきつめている作品に惹かれたんです。
そこを原点に掘り進めていくと「フラクタル」という言葉に行き着きました。
「フラクタル」というのは、縮尺を変えてもいつまでも同じ形が規則的に続いていくという概念のことで、それは人間の血液や細胞であったり、雲や木の形であったり、自然界のすべてにあるものなんです。自然界だけではなく色々なものにつながっているのではないかと考えるようになってから、人工物から自然物まで撮影するようになりました。

――昔の作品はビルを撮影したものが多かったと思うのですが、今回展示されているような日本建築を撮影するにあたり、なにか心境の変化などがあったのでしょうか。

ビルなどのモダンな建築の写真は海外の写真家の作品でも既にあって、自分の視点で日本でしか撮影できない作品を考えたとき、日本独自の建築である神社仏閣を撮るようになりました。
ビルとも建築的な共通点はあるのですが、もっと幾何学的なものが目立つんです。寺社仏閣は昔からシンボルとして扱われているから、それが持っている強さのようなものにも惹かれて撮影を続けています。
建築物のような大きなものを撮影していますが、撮っているのは小さな部分なんですよね。だけど、全体も部分も同じような感覚で撮るようにしています。
全体の中に部分があるし、部分の中に全体がある。しかもその部分部分に焦点を当てていくと普段目に止まらないものが浮かび上がってくるんです。ミニマルなのに、ダイナミックというか。
作品名に「Architectron(アーキテクトロン)」とつけているのですが、この言葉自体は僕の作った造語で、粒子レベルで見る建築といったような意味合いです。

――高木さんの作品は一枚だけパッと見ただけだと建築物の写真だと気づかないような、グラフィックデザイン的な美しさがありますよね。

有名な建築物も撮ったりしているのですが、意外と名の知られていない神社のほうがいい作品が撮れたりします。パッとわからないのはそのせいもあるかもしれませんね。
こういった建築は山の奥にあることも多いので、気がつくと撮影と山登りがセットになっていました。「撮影するぞ」というよりは「登ってやるぞ」という気持ちのほうが大きいこともあるくらいです(笑)。
寺社仏閣は屋外にあるので、天候や地形にも写真の雰囲気は左右されますね。抜け感のあるものを撮りたくても山が写り込んでしまったりもします。
今回出した作品でも背景が真っ白なものがありますが、これは一切レタッチせずに曇り空をバックに撮っています。運良く真っ白の空気だったのでこのように撮れました。

――展示作品を拝見して、プリントのサイズやプリント用紙に様々な工夫を感じたのですが、どのように作品のサイズや用紙を選んでいるのでしょうか。

作品サイズは単純に日本の家に飾りやすいサイズを考えて印刷しました。大きめの作品もありますが、それも掛け軸のような飾り方ができるサイズにしています。
プリント用紙は作品によって和紙や銀箔を使用しています。銀箔を使った作品は他の日本建築を撮影した作品と差別化するためにも、自然を強調するような見え方になるようにしました。

――今後の活動についてお聞かせください

作品としてはしばらくこのシリーズを続けていくと思います。今後は海外での展示をもっとしていきたいですね。
今の作品は東京、京都、奈良あたりで撮影したものが多いのですが、まだ九州や四国では撮影できていないので、全国を回って撮影していけたらなと思っています。

高木直之 写真展「fractale」
2020/10/20(火)~11/1(日)
11:00~18:00(最終日17:00まで)
会場:京都写真美術館 ギャラリー・ジャパネスク 1F
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