田中 祥介「散華」インタビュー

2019年9月10日

タイトルの「散華」について

(田中さん、以下敬称略)今回の展示は、「散華」というタイトルが元々の発想です。散華というのは仏教用語で、「仏さんに供養し、喜んでもらおう」という意味があります。
ですから、人に喜んでもらえる写真を作りたいと思ったのが大前提にあります。人に喜んでもらって、これは面白いな、綺麗だなとか、どんな評価でもいいんですけど、何か感じてもらえると良いなと思います。

作品について

(田中)何十年も一枚の写真で面白いことができないかと試行錯誤してきたんです。そうすると、戦争に行って写真を撮ったり、人の行かないような現場に行って写真を撮らないといけない。被写体がなければ、写真というのは成り立たないんですよね。そうではなくて、日常の中で気持ちを落ち着かせて物事を観察していると、見えてくるものがあるんです。あーいいな、おもしろいな、というものがいっぱいあるわけです。

(田中)これは、彼岸花の写真ですが、もっと強烈にできないか、面白くならないかなと思って一枚の写真を何枚かに合成しているんです。ほっとしてもらえたら嬉しいなと思いふすまや床の間に飾る掛け軸のような、そういった落ち着いたものを目指し制作しました。

(田中)壁紙って昔から様々なデザインの工夫があって、面白いですよね。この写真は、壁紙のような写真をイメージして撮りました。昔は、自然の素材の物だけで作られてきて、それが和紙ができて、染めてという形で発展してきた。その発展の一翼を担いたいなと思って作ったのがこの写真です。

現在のスタイルに至った理由

(田中)現在の作品スタイルに辿り着いたのは、実は5年前です。5年前に、ポストカードを何百種類と作って、今展示しているような表現をやってみたんですよ。そうすると、普段あまり感想を言ってくれない人が「綺麗ですね」と言ってくれた。人の心を動かす作品を作りたいんですよ。一枚の写真で勝負するのが王道ですが、表現者として今の道を選んだ。あと10年くらいは、これで行こうかと思っています。

死ぬまで挑戦したいこと

(田中)家でテレビを見るときに、番組のスタジオの背景にどんなものが飾られているか気にしながら見ているんですが、ほとんど写真は飾られていないんです。その度に、写真がなんとか使ってもらえるようになれば、少しでも浸透しないかという気持ちになるんです。床の間に飾れるようにと思って作っている作品も、すべては世間の家の中で少しでも写真を受け入れてもらえないかという気持ちで作っているんです。死ぬまでそれに賭けようかなと思っています。どこまで写真を受け入れてもらえるかチャレンジしたいと思っています。

【田中祥介 写真展「散華」】
会期:2019/9/3(火)~9/15(日)
会場:1F「雪」「月」
時間:11:00~18:30 ※最終日17時まで
※無休、入場無料
https://kyoto-muse.jp/exhibition/82017