~ 地球外の惑星のような景色が広がる「Mono Lake」をめぐるドキュメンタリー! ~
会場を異質な空間にしている奇怪な構造物は「Tufa(トゥファ)」と呼ばれる、湖底にできた石灰華(多孔質炭酸石灰の沈殿物)の柱。高さ1.5メートルの「Sand Tufa」のかたまりや、10メートルもの「Tufa」が立ち並ぶ様は、地球外の惑星のような印象を受けます。
この奇景は、アメリカ・カリフォルニア州の内陸部にある「Mono Lake(モノ湖)」を写したもの。水源の過剰利用により湖の水位が約20メートルも下がったことで地表に現れたのだそう。まさに自然破壊が背景にあるのだと、写真家の井田宗秀さんは言います。
「“Monolake”というドイツのテクノアーティストが好きだったことから、同じ名称のモノ湖の存在を知り、そこに広がる特異な光景に興味をもったのが始まりです。単に不思議な風景を撮るだけでなく、自分にしかできない表現は何かを考えながら、取材を進めていくうちに、環境破壊が背景にあることが分かってきました」
以来、井田さんは年1回のペースで取材に赴き、観光エリアをはじめ地図には載っていない場所を歩いて回り、モノ湖に広がる奇景を撮ってきました。
一方で、モノ湖はかつてアメリカ海軍の兵器実験場でもあり、それが環境破壊に拍車をかけたのだと教えてくれました。
「人間の文明が自然環境にどう作用しているのかを提起したいと考えるようになり、撮影対象はモノ湖だけでなく、モノ湖を取り巻く人間の存在へと広がっていきました。そのため、展示作品の中に様々な兵器を写した写真を組み込んでいます。モノ湖から少し離れたところにある軍事博物館で展示されているのですが、これを含めることで人間の文明に対する問題提起へと広げることができ、モノ湖に対する自分らしい視点を確立することができたと思います」
ディテールがはっきり見えるほど大きくプリントされた作品を見ていると、地表に出たことで脆く崩れかけている「Tufa」が、人類に対して「自然環境は一度失うと簡単には取り戻せないものだよ」と静かに語りかけてくるような印象を受けました。
この作品展で「Mono Lake」シリーズはひとまず終了すると話す井田さん。今後は、自身のテーマであるイランの風景やそこに住まう人々の姿を自分が見たままの素直な感覚で表現したり、「Mono Lake」シリーズでも撮影した兵器にフォーカスした表現をしてみたいと夢を教えてくれました。
期間中は在廊されているそうなので、モノ湖の現状や「Tufa」について興味がある方は、ぜひ会場へ足をお運びください。
【井田 宗秀 写真展「BREAKINGSCAPE」】
会期:2017年8月23日(水)〜8月29日(火)
10:30~18:30(最終日は15:00まで)
会場:銀座ニコンサロン(日曜休館)
展示情報
※大阪ニコンサロン(巡回展)
会期:9月21日(木)〜9月27日(水)