~古道具に染み付いた愛着と歴史を表現~
日本橋三越から徒歩5分にあるSpace2*3の1Fスペースに並ぶのは、藍色の陰影が印象的な20数点の作品です。写っているのは「古道具」たち。
写真家の宝槻稔さんは、古い道具や人物のポートレートを独特の世界観で表現しています。中でも今回の展示作品に代表される「道具シリーズ」は、約5年前に大工だった父親の道具をカメラで撮影したことから始まったそう。撮っていく中で、カメラを使うと撮影者の意図や思い入れが映り込んでしまうと考えた宝槻さんは、検討を重ね、スキャン技術を用いて即物的に表現する手法に行き着いたと話します。さらにモノクロやセピアではなく、サイアノタイプ(青写真)による青色が、それぞれの道具に染み付いた歴史や物語をくっきりと浮かび上がらせています。
「長く使われた道具には、使った人の愛着が残ります。単なる遺品撮影ではなく、古道具に刻まれた愛着や歴史の痕跡を表現したいと考えました。モノクロのプラチナプリントからはじまり、今の青写真という表現に行き着きました。青は人の印象に残りやすい色で、かつ色や感光液を重ねていくことでジャパンブルーである藍色を引き出し、時間の蓄積や奥行き感を出しています」
今回の展示は、道具シリーズとしての第一章のまとめだと話す宝槻さん。次章に向けてアイデアをどんどん進化させ、スキャンにこだわらずに自由度を広げた作品づくりを模索していきたいと抱負を語ってくれました。
会場では額装作品やそれ以外のプリント作品も展示販売しています。人が使うことで存在感を発揮し、使う人によって表情を変えていく「道具」たちの姿を見に、ぜひ会場へ足をお運びください。
【インターアート7セレクション 宝槻 稔 作品展「道具の力」】
会期:2018年10月30日(火)~11月11日(日)
火~金:12:00~19:30
土日祝:12:00~18:00
会場:space2*3(月曜日休廊)
宝槻さんのWebサイト
https://www.picturisk.com/