インターアート7セレクション 宝槻 稔 作品展「道具の力」

レポート / 2018年11月5日

古道具に染み付いた愛着と歴史を表現

入口から見たギャラリー。道具シリーズの作品の中から青でまとめたそうです。「青焼きは、日に焼けて酸化することで青く発色したものなので、長期間変色しません。長く使われ続けた道具を表現するのにぴったりだと考えています」とのこと。

日本橋三越から徒歩5分にあるSpace2*3の1Fスペースに並ぶのは、藍色の陰影が印象的な20数点の作品です。写っているのは「古道具」たち。

写真家の宝槻稔さんは、古い道具や人物のポートレートを独特の世界観で表現しています。中でも今回の展示作品に代表される「道具シリーズ」は、約5年前に大工だった父親の道具をカメラで撮影したことから始まったそう。撮っていく中で、カメラを使うと撮影者の意図や思い入れが映り込んでしまうと考えた宝槻さんは、検討を重ね、スキャン技術を用いて即物的に表現する手法に行き着いたと話します。さらにモノクロやセピアではなく、サイアノタイプ(青写真)による青色が、それぞれの道具に染み付いた歴史や物語をくっきりと浮かび上がらせています。

比較的小さいサイズの作品やキャンバス地にプリントした作品、また、額装もバリエーション豊富です。「小さいと近寄ってじっと見るでしょ? じっと見るというのは、そのモノを愛するのと同じです。作品づくりにかけた時間と同じくらいじっくり見てほしいというメッセージも込めています」と宝槻さん。

路面のディスプレイスペースに展示されたこちらの作品が目印です。1点もののハンドメイドフレームにあわせて、キャンバス地にプリントされた重厚感のある作品です。

「長く使われた道具には、使った人の愛着が残ります。単なる遺品撮影ではなく、古道具に刻まれた愛着や歴史の痕跡を表現したいと考えました。モノクロのプラチナプリントからはじまり、今の青写真という表現に行き着きました。青は人の印象に残りやすい色で、かつ色や感光液を重ねていくことでジャパンブルーである藍色を引き出し、時間の蓄積や奥行き感を出しています」

今回の展示は、道具シリーズとしての第一章のまとめだと話す宝槻さん。次章に向けてアイデアをどんどん進化させ、スキャンにこだわらずに自由度を広げた作品づくりを模索していきたいと抱負を語ってくれました。

会場では額装作品やそれ以外のプリント作品も展示販売しています。人が使うことで存在感を発揮し、使う人によって表情を変えていく「道具」たちの姿を見に、ぜひ会場へ足をお運びください。

写真左がDMにも使われている作品。ぜひ会場へ足を運んで実物を見てほしい深みのある階調です。作品の中で静かにただ存在している古い道具を見ていると、道具は人が使ってこそ魂が宿り生き生きと輝くのだと実感します。

展示にも工夫されていて、頭上高く展示された作品も。通常とは違った角度で見ることで新しい気づきがありそうです。写真上は赤い紙にモノクロプリントをしたものだそう。

【インターアート7セレクション 宝槻 稔 作品展「道具の力」】
会期:2018年10月30日(火)~11月11日(日)
火~金:12:00~19:30
土日祝:12:00~18:00
会場:space2*3(月曜日休廊)

宝槻さんのWebサイト
https://www.picturisk.com/