~刻々と移り変わる気配を感じる作品~
ギャラリーが集まる馬喰町駅より徒歩2分にあるdragged out studioは、スタジオ兼ギャラリー機能を持つオルタナティブスペースです。展示をはじめ、エキシビジョンやワークショップなど、多くのイベントが催されています。
祖母のカメラで学校帰りの田舎道を撮影して歩いたのが写真に親しむきっかけだと話す、写真家の川瀬一絵さん。レンズを通すことで気づいた季節の移り変わりを見逃したくないと、シャッターを押していたそう。作品づくりでは、被写体との距離感を大切にしていると話します。会場に展示されている作品も、川瀬さんが見たまま感じたままの風景です。
「文化も建物も気候も日本と異なるベルリンを訪れた時、ふと以前から知っているような気配を感じました。昔から続いている時間や空気といった流れのようなものの中に、様々な文化や事情があるだけなのだと俯瞰して感じる瞬間が確かにありました。その感覚を忘れたくなくて、シャッターを切りました。忘れてしまうものを写真で撮っておくことはとても大切。見たままをそのまま撮ることは難しいけれど、イメージを重ねて見ることで、その瞬間が確かにあったともう一度確認できるから」
時間の経過を感じさせるような並べ方や、見る人が操作したり作品の中に入っていくことで完成するような展示を意識していると話す川瀬さん。
会場には、風に揺れる樹木を連続して写した4点から成る作品〈風が吹いている〉、だんだんと濃くなっていく夕暮れ空の色彩を表現した〈色相方位磁石〉、二国から流れ込む二つの大河が合流し共に流れていく水面を写した〈Koblentz〉のほか、ワールドカップに沸くベルリンの町を写したとフィルムと、ベルリンからの帰路で立ち寄ったドーハで見たニュースを映像で記録した〈On the light〉が展示されています。
木々や空や川が移ろう穏やかな風景だけでなく、同じ時の中で現実が当たり前のように流れていく。そうした自然と人の気配を感じながら、ゆっくり眺めていたい作品です。ぜひ会場へ足をお運びください。川瀬さんは10日(土)、11日(日)は在廊しているそうです。
【川瀬 一絵 写真展「風が吹いている」】
会期:2018年11月2日(金)~11月11日(日)
12:00~20:00
会場:dragged out studio
http://dragged.jp/news/