【パリブログVol.17】「水漏れ、夜間外出禁止令、そして再ロックダウン」

パリブログ / 2020年11月17日

10月は2度目の水漏れから始まった。
あろうことか、朝、ギャラリーに出勤するとショーウインドーの中が黄色い汚水で水浸しになっているではないか。

鉄骨か木材の色か。

作品を避難させたものの、一部は既にダメージを受けていた。
一瞬、目の前が真っ暗になったが、今年で3回目の水漏れだ。すぐに対処するため頭を切り替えた。

まずは、原因を突き止めるために外へ出て水の流れを観察してみた。どうやら水漏れの原因は、アパート最上階の外壁に取り付けてある排水管に穴が開いており、そこから落ちた水が、2階窓の外側に葺いてある屋根のジョイント部分から浸水しているようだった。

ひとまず現場を写真と動画で記録してから、保険会社、不動産会社、施工会社、日本本社への連絡を済ませた。

今回の水漏れのタチが悪いのは、一定時間で集中した雨が降らないと漏れてこないこと。ギャラリーがオープンした夏場は乾燥しており、極端に雨が少なく雨が多い秋になるまで気づけなかった。実際は、この日が初めてだったわけではなく、過去にも起きていたようだった。

さらに、水漏れに関わる部分が広範囲に及んでいる。例えば、排水管など、建物の共有部分や設備は、建物を管理する組合が責任を負うため、我々の保険ではカバーできない可能性がある。

とにかく、できるだけ早く周りに動いてもらうより仕方ないと思い、関係各所に連絡するも、一向に思うように動いてくれない。

例えば、建物の管理をしている組合の場合。

穴の開いた排水管。

「配管のせいで水漏れしているから一度見にきてください」

電話をしてもメールしても、とんと返事が来ない。

不動産会社に連絡してみても、

「わかりました、組合に連絡しておきます」
「大丈夫です、彼らで協議しているようで、対応は進んでいます」

という返事が来るだけ。具体的にどう動いているのか、全く見えず不安が募る。

水漏れしたショーウインドには照明機材が入った空間があり、水漏れの様子を確認するために中を見たかったので、リノベーションを依頼した施工会社に連絡した。

電話では、

「わかりました、ネジで設置してあるから、開けてみましょう」

と言っていたが、いざ施工した職人が来てみると、

「どこを止めたか分からないから、一旦壊すしかないですね」

という。

また、2階の屋根部分を察するためには、当然窓を開けなくてはいけないのだが、この窓、元から古いことに加えて、施工会社がペンキをベタベタ塗ってしまったため、開かないのだ。仕上がりを見た時に絶句したが、当時窓は使わなくてもいいか、と思っていた。まさかこんなことになるとは……。

借りてから一度も開かなかった窓。

「お宅がペンキを塗りすぎたせいで開かなくなったから、開くようにペンキを剥がせないでしょうか?」

と聞いても当然、

「元から古い窓だったので、開かないのはペンキだけのせいじゃないですよ」

結局ギャラリーには来てくれたものの、解決には至らず。

困った私は、何度か話したことがある前の店子さんである写真専門書店の「La Nouvelle Chambre Claire」のレバノン人のジンセンさんに助けを求めた。

「水漏れしたんですが、昔もありましたか??」

唯一親身になって助けてくれたのが、彼だった。

話によると、一度同様の水漏れが起こり、本が水浸しなったらしいが、二階の屋根部分をビニールシートでカバーしたら、水漏れは止まったということ。窓も少し工夫がいるが、開けて使っていたようだった。

保険会社は、忙しいらしくアポイントは最短で4週間後。その間になんとか、応急処置だけでも済ませなければ。それに、11月は展示替えを予定していた。このギャラリーの大きな武器であるショーウインドーを、それまでに使えるようにしたかった。

ということで、ペンキを溶かす薬剤を使って窓枠のペンキを溶かし、カッターナイフ、トンカチとドライバーを駆使して5時間くらいかけて窓をこじ開けた。それから、屋根のつなぎ目に防水テープを貼り、その上からビニールシートで覆うことで応急処置を施した。

歓喜の瞬間。気持ちの良い風が吹き抜けた。

そんなことを10月初旬から中旬にかけてやっていたら、コロナウイルスの感染者数が増加してきたということで、10月22日に夜間外出禁止令が発令された。

「まぁ21時以降だからギャラリーの運営には支障はないだろう」

そう思っていたが、だんだん雲行きが怪しくなる。
あれよあれよと感染者数は増え、本格的な「第2波」が到達。毎日2万人前後の感染が報告される。大統領の会見が28日に行われ、

「明後日からフランスは再びロックダウンを行います」

と発表。夜間外出禁止令からたった一週間ちょっとで、フランスは再びロックダウンに入り、ギャラリーも期間中閉めることになった。

ロックダウン前日、道路はパリから脱出する車で溢れた。報道によるとパリを含むイル=ド=フランス地域圏では合計711Kmの渋滞が記録されたそう

今回のロックダウンは春と違い、テレワークができない仕事に関しては通勤OK、学校も閉鎖されていない。街の様子を見ると、春よりも警察のチェックも緩いようで、効果を疑問視する声もある。解除については、「12月中旬くらいでは?」と明るい噂は聞かない。

本来は観光客や買い物客で賑わうサン=ジェルマン

コロナ禍よる2度のロックダウン、そして水漏れと、そのほかたくさんの細かいトラブルが発生。それらの問題解決に追われギャラリーオープンからあまり本格的にギャラリーの活動ができていないが、ロックダウンが明けギャラリーをまたオープンできる時までに、今できることを進めていく。

サン=シュルピス教会。ロックダウン中は晴れの日が恨めしい。