雨宮 里江 写真展「狩猟写真 摂生展」

レポート / 2021年1月23日

~食べることを“ただの繰り返し”と思わず、見つめ直す機会をくれる写真展~

狩猟できる期間は11月~2月までですが有害鳥獣駆除をしているため年間を通して、週末は山に行くことが多いですと、雨宮さん。

以前こちらのギャラリーで行われた幡野広志さんの「いただきます、ごちそうさま。」に続く、狩猟写真展「狩猟写真 摂生展」にお邪魔してきました。セルフポートレート作家として数多くの作品を発表されてきた雨宮里江さんに、狩猟家としての思いや作品についてお話を伺ってきました。

A4サイズ95点の作品が展示されています。狩猟というものが、命をつないでいくという自然の営みの一部であることが伝わってきます。

ー狩猟をしてみようと思ったきっかけなど教えてください。

もともと野草を食べたり釣りが好きということもあって、その延長線上に狩猟という世界があることは知っていましたが、一般の人が入れるとは思っていなくて、狩猟マンガで(一般の人も)できるということを知りました。
学校の帰り道に野いちごを食べたりといった、自分で見つけて採ったものを食べた時の宝物をみつけたみたいな気持ちを、ずっと自分の中で大切にしていて、 肉も魚も植物も自分がとって食べられるといいな、食べてみたいなと思ったのがきっかけですね。
買って食べるのとはまったく違う、自分なりの生きるための糧をもっているということが、(自分の中の)自信にもつながっていっていると感じています。

ー私たちは普段、屠殺・解体された肉を口にしていて、目に入らないからこそそれへの罪悪感などを感じていませんが、それに向き合うことで気持ちに変化はあったりしましたか。

いざ狩猟をやってみて最初に獲ったものは鳥でしたが、撃っておちてきた鳥を見たとき「動物を大切にしましょう」といった今までの道徳観が一気にきたと同時に、ちゃんとそれを食べてあげないと、という気持ちになりました。私自身も獲って食べるということを、真正面から向き合っていくぞという覚悟に変わっていきましたね。
魚を釣るときと同じように、無駄なく美味しく食べられるようにしたいし、美味しいと感じることは食べ物への感謝の気持ちだと思うので、いつまでも大事にしたいと思っています。またそれが食べるために動物を殺した自分たちの責任ではないかと思っています。

私たちが普段何気なくしている「肉を食べる」ということが、こんなに大変なことなんだと実感させられます。 人々に食べられるために生産されている畜産肉と、生き残るために日々過ごす動物とは肉として味も食感も全然違います。まったく別物です、とお聞きしました。

ー写真を拝見して意外と女性がたくさんいらっしゃるなと思いました。

猟友会とは別に、よく行っている南足柄市で、食育や狩猟による社会貢献といったことをやりたいなと「ジャパンハンターガールズ」という社団法人をメンバーと去年の秋に立ち上げました。猟友会での女性の割合は全体の2%ということもあり、今後女性が参加しやすいような窓口になっていければと思っています。
狩猟体験ツアーも行っていて、一人で参加される女性も結構います。そういった参加者から、野菜や魚はルーツが分かっているけれど、肉は見る機会がなくどうやって自分たちの口に入るものかを知りたくて来ましたといったことを、よく聞きます。実際女性の方が食への興味が強く、美味しく食べるために勉強したりといった努力を惜しまないなと思いますね。
スーパーに並んでいる大量生産された肉ではなく、自分が労力をかけて獲ったということも大きいですし、女性ならではの食への思いや意欲といったものを非常に感じています。

ーその体験ツアーとはどういったものでしょうか。

一日目は狩猟をするための座学と罠を見回り、農家さんのお話を聞いたりして夜はジビエのバーベキュー、二日目はグループ猟に参加して実際に体験してもらうというのが一連の流れです。狩猟のためにいったいどれくらい(費用が)かかるのか、どこに問い合わせをしたらいいのか、近くに参加できる猟隊がないといった相談にも紹介をするなどの、アフターフォローもできるよう頑張っています。

鹿の角を使ったハンドメイドのアクセサリーも販売されていて、鹿の角をアクセサリーにというのは女性ならではのアイデアだなと!

ー今回の写真展についてお聞きしてもいいでしょうか。

いつか写真展をしたいと思っていて、3年ぐらい前から撮りためていました。 写真展ではまず最初に朝もやの中、山に入り狩りをし解体をして食べるという流れを作っていて、作品として何を伝えたいか、自分が受けた衝撃だったり、気づきといったものを見る人に受け取ってもらえたらと思います。サイズは、当初は(大小の)差をつけようかと思っていたのですが、サムネイルを床に並べてみて、物語でありドキュメンタリーでもある作品の性質上、サイズを揃えフラットに見てもらうことで食について考えてもらいたいなと。

以前ジビエ振興会の方とお話したときに「殺生」という言葉は、生き物を殺す意味に多用されているけれど、殺して生きるという言葉は、生きていくために食べるために殺しをするというものとお聞きして、それは自分に摂りいれて生きるということではないかなと思い、今回「摂生展」(せっしょうてん)というタイトルにしました。
解体後に残滓といった肉として食べない部分は埋めるというルールがあるのですが、その日の夜には動物たちが掘り返し食べてしまうのです。自然界で骨肉類になるタンパク質がいかに貴重かという、自然界のサイクルだなと感じさせられます。

いろいろな食、自然界に生きるものたちを見て、命というものの等しさを感じさせられます。

ー以前の写真展とはまったく違ったジャンルですね。

ホントそうですね(笑)写真をはじめたころの初期衝動といった、なりふり構わずの部分が落ち着いてきて、「写真家とは」ということを意識しすぎて、グルグル考えている時期が2年ほどあり、 写真から思いきって離れようと思いました。その頃、今一緒に活動しているメンバーたちとの出会いがあり、どんどん狩猟にハマっていき、学生時代の様な純粋な興味で動いている自分がいて、原点に帰ったような気持ちで今(写真を)やれています。
今までは狩猟していることをSNSに出したりすることの弊害を感じて、出せなかったりもしたのですが、信頼する大事な人たち(メンバー)との出会いがあり、この写真展が狩猟を知りたいと思う人に届き、琴線にふれるものになればうれしいです。
狩猟自体をいやと思う人がいて、それは自然なことですし、そうした人たちになるべく配慮をしつつ、知りたいと思う人たちに伝えていければと思います。

食を思うことは自分の命を思うことと直結していて、普段食べている食材をについて考えみると、食べ残しをするのはやめよう大事にしようかと思ったり、こういった狩猟を知って残酷だし、もうお肉を食べるのはやめようと選択する人もいて、生き方自体を決めることにつながっている気がしています。
狩猟という世界を知ってもらうことで、自分なりの食と生き方を見つめ直すきっかけになってもらえたらと思っています。

プロフィール

雨宮さんに詳しくお話をお聞きして、かわいい小さな動物を撃つのはかわいそうと思うけれど、日常的に肉を食べていて、人は矛盾を抱えて生きているというけれど、自分は不都合な事実にはまるっと蓋をしているなと感じました。
口にしているもので、自分で一からつくりだしものは一切なく、それはずべて誰かがつくってくれているもの。それを当たり前と思い、感謝することもされることも少なくなってしまっていることに反省しきりです。

今回は感染症拡大予防のため、予定されていたジビエパーティーが中止になりましたが、機会があればジビエを美味しく食べることで、自然から命をいただいていることを忘れず生きていきたいと思いました。

雨宮さんがはじめて仕留めたという鹿。会場には作品の他に、女性ハンターが手掛けたヒノキなどの木材にウッドバーニングで繊細な絵が描かれたインテリアも飾られています。(会場で購入可能です)

雨宮さんたちが立ち上げたジャパンハンターガールズ。定期的に体験ツアーなどの狩猟者の育成やジビエの普及など様々な活動をされています。

【雨宮 里江 写真展「狩猟写真 摂生展」】
会期:2021年1月19日(火)〜1月24日(日)
11:00~17:00
観覧料:ワンドリンク制(300円~)。
会場:ego - Art and Entertainment Gallery
https://egox.jp/event/20210119/

【写真展協賛】
一般社団法人 Japan Hunter Girls
https://www.jhg.or.jp/
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