中根 秀夫「うつくしいくにのはなし Ⅱ」展

レポート / 2019年3月19日

~青く可憐な春花「わすれなぐさ」の様々な表情から、生き方やを考える~

会場にて、中根さん。「半分写真、半分絵画という展示はあまり見かけないので、やってみたいなと思い企画しました。作品を見てきれいだなと思ってもらえれば嬉しいです」と話してくれました。ちなみに、『わすれなぐさ』を詠んだドイツの詩人は、今や本国ドイツでもほぼ忘れられていて、日本の古い翻訳の中でのみ残っているそうです。長い歴史や時間の中で記憶がどう受け継がれていくか、考えさせられます。

イギリスへの美術留学で日本とは異なる文化や社会に触れた中根秀夫さんは、帰国後、絵画を中心に映像や写真など様々な表現の作品を発表しているアーティスト。「色」をテーマにした作風が特徴で、今回の個展は青を基調にした新作の写真21点と絵画9点に、前作の写真1点を加えた展示内容です。

わすれなぐさは、1cmほどの青白い花が特徴の春花です。アンダーでマクロ撮影することで落ち着いた世界観が生まれ、小さい花の表情が現れています。絵画のようにも見える柔らかい輪郭から、「わすれなぐさ」ということばにこもる情感が伝わってくるよう。

写真作品のモチーフになっているのは、青く可憐な春花「わすれなぐさ」。前作「うつくしいくにのはなし Ⅰ」で福島の風景写真を展示するにあたり、ドイツの詩人ウィルヘルム・アレントの詩『わすれなぐさ』を引用した際に、イメージが結びついたのだそう。一つの鉢を半年にわたり撮り続ける中で、長い時間の中で歴史や記憶がどう受け継がれていくのかに着目したと言います。

2月から7月にかけて撮影。展示の最後(写真右側の2枚)には、7月になり枯れてしまった「わすれなぐさ」を写した作品が大きめにプリントされています。

「僕は絵画の人間なので、写真に対する扱いが写真家さんとは違うかもしれませんね。どちらかというと映像に似ていて、モチーフを繰り返すことで少しの変化を表現しています。それに青という色が加わることで、写真と絵画という二つの世界がつながる。とかく現代の日本は一つのことに決められがちで息苦しい社会ですが、同じくにに暮らしていても、一人ひとり自分の生きる場所や時間のあることが大切だと考えています。それが何かのきっかけで交差したりしなかったりする。自由でいいのだと思います」

2014年の「うつくしいくにのはなし Ⅰ」でも展示された作品。福島の風景を撮影したもので、
色テーマは緑と青だったそうです。今回の展示でも、会場の一角に展示されています。

絵画作品の展示の様子。作品右から、「salvia blue」4点、「blue grey」3点、「lead」2点。
時間とともに変化する、わすれなぐさの色を表現しているのでしょうか。

青い色画用紙の横線のテクスチャに、縦の色の流れが加わることで、多様な表情を見せています。

この会場で場所や時間を共有してもらい、感じたことをそのまま持ち帰ってもらえればと、中根さん。ステイトメントには、中根さんが2018年に岩手・陸前高田を訪れた時に感じたことが記されています。

会場にて、中根さんが東京都美術館の「都美セレクショングループ展」に出展した際のパンフレット『海のプロセスー言葉をめぐる地図(アトラス)』が展示販売されています。
また、先着80名でポストカードを無料配布しています。

一つとして同じ表情をしていない青く可憐な春花「わすれなぐさ」は、私たちに何を忘れないでと語りかけているのでしょうか。中根さんは今日3月19日(火)以外は、毎日午後に在廊される予定だそうです。ぜひ会場へ足をお運びください。
また、同時に展示されている絵画は、青い色画用紙に青系の色を縦に垂らした抽象的な作品です。併せてお楽しみください。

会場入口には、短編小説のようなステイトメントと、中根さん手作りのスノードーム(非売品)も展示されています。「ひっくり返して雪を降らせてください」と中根さん。きれいなだけでなく、小さな記憶が深々と降り積もっていくようにも見えます。

【 中根 秀夫 写真展「うつくしいくにのはなしⅡ」】
会期:2019年3月18日(月)~3月23日(土)
11:00~19:00(最終日は17:00まで)
会場:Galerie SOL
http://www005.upp.so-net.ne.jp/…/EXHI…/2019/201903nakane.htm

中根さんのWebサイト
http://hideonakane.com/