葉 駿融 写真展「Thetis」

レポート / 2019年2月19日

~夜の海が見せる様々な表情をとらえた作品~

会場にて、葉さん。DMにも使われている作品の前で。「自分の考えよりも、観た方の中に面白いイメージが生まれるのを楽しみにしています。何を感じたか、ぜひ教えてください」。いろんな人の感想や意見が勉強になり、次の作品づくりのヒントになると、話してくれました。

プロキオン・フォースは、アイデムフォトギャラリーシリウスが39歳以下の若手写真家に発表の場を提供する支援プロジェクトです。
現在展示されているのは、台湾出身の写真家・葉駿融(ヨウ・ジュンロン)さん。ワーキングホリデーで訪れたオーストラリアにて様々な生き方をする人々と出会ったことがきっかけで、「一度きりの人生、自分のための作品をつくりたい」と写真の道へ踏み込みました。

海に対して、母や女性といった優しいイメージを持つという葉さん。「僕に命をくれた母には、どんなに返そうとしても返しきれない恩があり、ある意味で遠いすごい存在です」。恐れと同時に、命を産み育む存在として畏敬の念を持っているのだと、話してくれました。

会場の様子。3枚以外はすべて夜の海。三脚を立てて長時間露光することで、人間の目には見えな
い表情が見えてくるそうです。

星空の撮影に訪れた冬の海で波の音に気づいた葉さんは、ふと海という巨大な生命体と対峙しているような怖さを感じたという、葉さん。海の様々な表情をもっと知りたいと考え、夜の海に通って撮影するようになったのだと教えてくれました。

「知人が僕に見せる普段の顔と見せない顔があるように、海も私たち人間には知り得ない意思や表情があるかもしれないと考え、夜の海を撮影するようになりました。現実的な海と、非現実的な海の両面を混ぜて展示しています。一方で、僕自身の考えよりも、観た方が何を感じたかに興味があるので、ぜひ感想を聞かせてほしいです」

葉さんは、今回展示している海のシリーズの他に、森のシリーズ、夜のトイレを4×5で写したシリーズなど、複数の作品を撮っています。「日本で撮っているシリーズが複数あるので、日本に残り作品を完成させたい」と、今後の目標を語ってくれました。

展示の様子。長時間露光であらわになった夜の海の表情は、見たことがあるようでないものが多く、新しい気づきがあります。

また、タイトルの「Thetis(テティス)」とは、古代ギリシャ神話に登場する海の女神の名前。葉さんにとって生命の源でもある海は、母や女性のような優しいイメージを持つ畏敬の存在なのだそう。

シリーズ最後の一枚だけ、月と海が一つの画面に収まっています。
「海を命として見ると、地球や月も一つの命と考えられます。月の引力で潮が満ち引きする海は、月をどういう風に見ているのだろうと考えた作品です」とのこと。そう考えると、潮の満ち引きとは、月に向けて何かを伝えようとする海の意思なのかもしれません。

展示されているのは、多様な表情を見せる海の写真約40点。現実的な海と非現実的な海の作品があり、観る人によって様々なイマジネーションが生まれるかもしれません。
会期は明日までです。気になる方や時間に余裕のある方はぜひ会場に足を運び、自分の知っている海、自分の見たことのない海の表情をお楽しみください。

【葉 駿融 写真展「Thetis」】
会期:2019年2月14日(木)〜2月20日(水)
10:00~18:00(最終日は15:00まで)
会場:アイデムフォトギャラリー シリウス
https://www.photo-sirius.net/tenji/

葉 駿融さんのWebサイト
https://www.junyeh.com/