夏休みが終わり、一気に気温が下がり秋の色が濃くなった。マロニエの葉っぱも散り始めて、街行く人々はもうセーターやコートを着込んでいる。
夏休みに入る前は、滞在許可証の更新で慌ただしかった。
一度取得した滞在許可証の期限が8月で切れてしまうため、滞在身分の変更作業をしてさらに4年間の滞在権を得た。
この結果を得るまでに、フランス人の弁護士に何度か相談した。
が、返答が要領をえなかったり、もらったアドアイスを元に作業を進めても行き詰まったりと、うまく進めることができなかった。
結局、自分で調べて強引に必要書類を揃えて提出したら、難なく申請が受理された。
運も良かったと思うし、なんとなくフランスの行政手続きのコツもわかった気がする。
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夏休みを終えてから、アムステルダムへ出張へ出た。
年明けから出展の準備を進めていたUnseen Amsterdamだ。
フランス国外でのアートフェア参加は初めてだったし、
Unseenはヨーロッパの中でも大きなフェアなので楽しみにしていた。
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今回は一人で設営から接客まで行なったが、パリから作品を運ぶのに3つのギャラリーでの共同便を依頼したので、同じパリから来た他のギャラリーチームとフランス語でお喋りをすることができた。またHagueから来た隣のブースのお二人がとても親切で、何かと気にかけてくれてとても助かった。こういうイベントに来ると、こうした人のつながりができるのがとても楽しい。
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どこのギャラリーもとても力強い作品を持ってきており、レベルはとても高かった。オランダのギャラリーが多かったこともあり、事前に招いていたたゲストや、アーティストの知り合いなどがブースを訪ねてくる場面も見かけた。
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我々は完全にアウェイだ。
オープンして2年目のギャラリーで初参加。ギャラリー名もアーティストも知っている人はいないだろう。招待できるゲストもいなかった。
今回持っていった清永の「樹々変化」「修羅の森」の2作品は、我々のブースが入り口から近かったこともあり、来場者の多くの方々に見てもらえた。
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特に「樹々変化」は、フェアの中でも異様な存在感で受け入れてもらえたように思う。
何名かから「今回のフェアの中で一番良かった」というとても名誉な言葉もいただいた。
ただ、販売は難しかった。
何度か価格や仕様についての話に進んだが、先へいけない。
隣のブースでは、毎日二、三件の販売があるのに、とても悔しい想いだった。
ブースを回ったり、他の出展者と話していて反省したのが、買ってもらうためにできることを、まだできていない、ということ。
一般の購入客はほとんど、インテリアとして自分の部屋に飾る前提で作品を見ている。「自分の部屋に飾ったらどうなるか」とイメージさせるための空間を家具だったり、壁紙だったりで作り込んでいる。また、額装についても緊張感をもたない、木の暖かな質感のあるフレームが主流だった。
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清永の作品を多くの方に見てもらえた。だが、作品を迎えてもらうには、ヨーロッパの家を想定したパッケージングを工夫しなければ、よそのギャラリーの作品に競り負けてしまう。そんな気がした。
来場者の数と質、参加ギャラリーのレベル、主催者のオーガナイズどれをとっても、一流のアートフェだった。参加させてもらえて楽しかったものの、結果を出せなかったのは悔しい限りだ。
「美しい」「素晴らしい」といった言葉も嬉しいが、購入してもらうことに勝る賛辞はない。そこに至るまでに、きっとギャラリストができることは、まだまだたくさんあるはずだ。
年内もあと3ヶ月になる。今月はギャラリーでの展示「Lost Village」があり、11月にはParis photoが始まり街が賑やかになる。来年の仕込みも準備しつつ、精一杯駆け抜けたい。