世間が夏休みに入る直前、大きなイベントがたくさんあった。まずはサッカーのUEFA欧州選手権。順当に勝ち進んでいくにつれてフランス戦のある日は街中にユニフォームを着ている人が増えて「今日は試合があるんだな」とわかるくらいに盛り上がっていた。試合中は街中が静かでゴールのたびに歓声が上がるので、テレビで試合の結果を追っていなくても、結果がわかるほどだった。
残念ながらフランスは準決勝で今回優勝したスペインに敗れたが、決勝戦は7月14日の革命記念日。もし優勝でもしたら、この日は大騒ぎになっていただろう。
また、サッカーと同時並行で行われていたのが総選挙だ。6月30日の第一回投票で右翼政党の「国民連合(RN)」がトップに立ったことで、動揺が広がっていた。7月7日の決選投票では左派連合「新民衆戦線(NFP)」が最多議席を獲得。現大統領のエマニュエル・マクロンの与党連合が2位、国民連合(RN)が第3勢力となった。結果を受けて左派の支持者がレピュブリック広場に集まって勝利を祝っていた。
2つの大きな“お祭り”が終わった後に革命記念日の式典が行われた。オリンピックの影響で恒例の軍事パレードはシャンゼリゼではなく、隣のフォシュ通りで行われ、夜のエッフェル塔での花火は無観客で開催された。
さて、本題のオリンピックだが、地元の反応は冷ややかなようだ。開催前からアナウンスされていた交通規制や、公共交通機関の切符の値上げ、観光客による混乱を避けて例年よりも多くのパリジャンがオリンピック開催前にパリを脱出しているようだ。また、外国からの観光客も予想よりも少ないようで、ホテルの客室も余っているとか。少なくとも、交通規制が始まった7月20日の時点では、サンジェルマン界隈は非常に静かだ。
オリンピックが始まると観光客が増えるのか、現段階では全く予想がつかない。それにアート業界がオリンピックで恩恵を受けるのかも疑問だ。パリ市の屋外展示や美術館では、スポーツに関連した展示が行われているが果たしてオリンピックを観に来る人たちはアートを買うのだろうか。
なにしろ、ほとんど100年ぶりのパリでのオリンピックだ。蓋を開けてみないことには誰にもわからない。とにかく大きな事件や事故がなく、無事に夏が終わることを願っている。