石井 麻木 写真展「3.11からの手紙/音の声」

レポート / 2019年2月8日

~写真とことばで人と人の思いを届ける写真展~

会場入り口にて石井さん。スペース・ゼロでの写真展は4回目。
これまで全国14都府府県で開催。まだ写真展をしたことのない地域や、近年災害の被害を受けた地域などで開催するなど、可能な限り伝えつづけたいと、思いを話してくれました。

2スペースからなる会場をびっしりと埋めつくすのは、3.11から現在までの7年間を伝える、写真とことばです。

ジャーナリストとは違う視点で描かれる東北の今。東北の人たちが残してほしいと願った8年間を、来場した方それぞれの視点で感じてみてはいかがでしょう。写真には短いことばが添えられています。11日の月命日に「この日だけは一人でいたくない」という一人暮らしの高齢者のことば、「あの日」と呼ぶ人々のこころなど、写真の端々から伝わってきます。

はじまりは2011年。3.11の直後、いてもたってもいられず物資を届けるために東北へ向かった写真家の石井麻木さん。傷ついた姿を写すことは暴力だと考えていたため、当初は写真を撮るつもりはなかったそう。しかし、地元の人たちからの「写してほしい」「残してほしい」との真剣な声に、ずっと見つづけさせてもらう覚悟を決めたのだと言います。

3.11直後からの写真とことばをまとめた展示。目の前の人と向き合う中で感じた思いが組み写真とことばで記されています。「こころをだきしめる」という表現が、繰り返し足を運びつづけている石井さんらしく。また「99人が撮ってほしいと言っても、1人が傷つくかもしれない」といった、石井さんが見つづけさせてもらう覚悟を決める過程の葛藤を残したことばが、私たちが東北に向けるこころの指標に感じました。

それから毎週東北へ通い、こころに寄り添いながら人々の姿をカメラに残しつづけてきました。
石井さんにとって東北に足を運び写真を撮ることは郵便屋さんの代わり。東北へ行こうと思っても様々な事情で行けない人たちが、石井さんの写真を通して東北にこころを向け、そうして届いた多くの声を再び石井さんが東北へ運ぶ。そういうこころの橋渡しができればと話してくれました。

会場には年齢性別を問わず多くの方が訪れ、石井さんが運んだ東北の方々の思いに向き合う姿は、まさに親しい人からの大切な手紙を読んでいるよう。

「目に見える部分はきれいになっても、こころは癒えていません。3月11日だけ特集が組まれ、そのあとは急激に何事もなくなっていく様が、くやしいし、もどかしい。だから月命日の11日には、必ず何か写真やことばを発信しています。まだ終わっていないんです」

会場の物販コーナーの一角には、募金箱も。「東北や災害関連のことで1円ももらいたくない」と、グッズ売上のほぼ全額を復興支援に送っているそうです。

年月と共に世間の関心が薄れかけている現在も、月に2~3度は必ず東北へ。どの写真にも、家族のように、親友のようにそばで見つづけた石井さんにしか撮れない表情が写っています。
2012年3月に大阪での展示を皮切りに、全国各地でこれまで32回開催され、延べ7万人が足を運び、多くの人々が心魂を揺さぶられた写真展です。来月で3.11から8年のこの時期に、ぜひ石井さんの写真とことばを見ながら、東北へこころを向けてみてはいかがでしょう。

東北ライブハウス大作戦により、宮古や石巻などで鳴らされたライブの写真も展示されています。「ラジオから流れたバンドの一曲で生きる力をもらったという高校生の言葉に、音楽の力を改めて実感しました。この8年間、多くのアーティストが何度も足を運び、音楽を届けている姿を撮影しました。切り離して展示することは考えられないです」と、石井さん。普段は音楽や映画関係の撮影をしているそう。東北の地で歌を届けるアーティストの力強い姿が並んでいます。

石井さんが共に活動をしている東北ライブハウス大作戦、幡ヶ谷再生大学、石巻へい輪プロジェクトなどの団体による復興支援グッズブース。石巻の漁師の奥さん方が手作りしたミサンガなどがあります。

2スペースのうち1スペースは復興支援ブースとして、熊本地震や九州豪雨、西日本豪雨などの写真が展示され、復興支援グッズが販売されています。
また、展示期間中の2月11日(月・祝)には、会場にて写真家の平間至さんとのトークセッションが行われます。2月4日より整理券が配布されていて、定員に達したら配布終了とのことなので、気になる方はお早めにどうぞ。

もう一つの展示スペースは、復興支援ブースとして、熊本地震や九州豪雨、西日本豪雨など、ここ数年各地で発生している地域に、物資を届けに行ったときの写真が展示されています。

【石井 麻木 写真展「3.11からの手紙/音の声」】
会期:2019年2月4日(月)~2月16日(土)
11:00~19:00(最終日は18:00まで/入場無料)
会場:全労済ホール/スペース・ゼロ B1 ギャラリー・展示室
http://www.spacezero.co.jp/information/130980

「3.11からの手紙/音の声」のWebサイト
https://www.311tegami.com/