【パリブログ】Vol.5「ビザについて」

パリブログ / 2019年11月1日

11月1日(金)

先週末に夏時間が終わり、1時間後ろ倒しになった。日が登る時間が遅くなり日没も早い。街中でも分厚いコートを着ている人を目にすることが増えた。幸い同じ週末に日本から送ってもらっていた、冬服を詰め込んだ船便が届いた。インナーを重ね着したりして騙し騙し過ごしてきたが、そろそろ本格的に冷える日もでてきたので、アウターを買おうか買うまいか悩んでいたから助かった。今年の冬はなんとか手持ちの服だけで乗り越えたい。

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学生でも、ワーキングホリデーでも、会社員でもどんな身分であれ日本人がフランスに長期滞在するために必要なのが、在日フランス大使館で発行されたビザだ。

よくこの話になると、アメリカやオーストラリア、カナダなどのビザと混同して「じゃあ就労ビザを取るんですね」と言われることが多かった。ビザについては日本とその国との協定なので、各国で事情は違う。私はフランスについてのことしか分からないが、今回はビザ取得に至るまでの経緯を書いていこうと思う。

私が取得したビザは「フランスで働くためのビザ」のうちの「企業内派遣・研修(ICT)」ビザというもの。

フランスに限らずビザ取得に関しては、

1)業者、弁護士に依頼する

2)自力でとる

の2つの方法があると思う。

1)についてはインターネットで調べると学生の留学支援や弁護士事務所、フランス語学校のサービスのビザ取得支援などがたくさん出てくる。また、企業で派遣される場合は企業が抱えている弁護士や人事部など別のセクションがとってくれることもあるだろう。

ビザの種類によっては、フランス語や英語がある程度使えれば、書類を作ったり集めるのに時間と手間はかかるものの、自力で取得することはそう難しくはない。実際私はワーキングホリデーの時は自力で取得した。ただでさえ渡航費と滞在にお金がかかるのに、サポート会社に貴重な予算をつぎ込むのは、ばかばかしい。留学やワーキングホリデーのビザについては、たくさんの人がブログなどでその顛末を記録してくれているので、参考情報も多かった。

今回のビザ取得に関しては、1)、2)を合わせた形、つまりサポート会社の支援を受けながら自力で取得した。ギャラリーの運営会社がフランスについてのノウハウがないこと、ギャラリー事業自体が本流の事業でないことなどから、大企業のようなサポートは望めなかった。かといって、自力で全てを準備するのは難しそうだったので、当初は前回のブログでも書いたサポート会社F社にビザの取得もお願いしようとしていた。だが、「ビザについてはサービス外」とのこと。質問などは現地のスタッフや弁護士含め相談に乗ってくれるというので、この体制で進めることになった。

さて、今回のビザ取得の何が大変だったか。

まずは、参考情報の少なさ。

今回のプロジェクトは

1)新たにパリ支店を立ち上げる

2)そこで働くためにフランスに滞在するビザを取得する

という2つのステップがあった。他の企業でもこうした事例は数多くあるだろうが、そうしたプロジェクトの顛末を親切にブログに残してくれる人は少ない。また、一見大使館のホームページを見ると分かりやすく必要な書類を示してくれている。そう思っていざ書類を集めたり、作ったりしていくといわゆる「コロンブスの卵」的な問題が多々発生するのだ。例えばビザ取得の段階から現地での住所を要求される、フランスの銀行口座を持っていることが条件に入っているなど。まだ、フランスに行っていないのに家を借りろということ?
そもそも日本にいながら口座は作れるのか? ビザ取得のためにフランスへ行って口座を作らなければいけないの? とたくさんの「?」が出てくる。

そして在日フランス大使館ビザセクションの対応の悪さ。

これは日本のフランス界隈では有名な話で、要求される書類のそもそもの意味が分からないものがある。そうした場合にフランス大使館へメールで問い合わせをかけるのだが、(電話での問い合わせや直接大使館に行っても断られる)根本的な解決にはなかなか至らない。

そのため、私は相談に乗ってくれそうなあらゆる機関に電話やメールで問い合わせて情報収集を行なった。ざっと挙げると以下の方々にお世話になった。

・JETRO大阪

・フランス貿易投資庁日本事務所

・京都のフランス語学校 AJ-FRANCE

・在日のフランス人の友人

・在仏の日本人の友人

この中でも、フランス貿易投資庁日本事務所の担当者はとても親切だった。フランス大使館に入っているのでビザセクションに確認してくれたり、日本にいながらフランスの口座を開くために金融機関を紹介してくれたりと、非常に尽力していただいた。もし、読者のなかにフランスでのビジネスをお考えの方がいたら問い合わせてみることをお勧めする。

また、京都の語学学校で聞いた話も印象に残っている。

私と同じように、行き所のない質問やクレーム(?)をぶつけられることもあり、業務が妨げられているとのこと。「本来ビザは自力だけで取れるべきものだと思うんです」とこぼすスタッフの言葉からも、フランスのビザ取得に関する説明の不足や複雑さが想像いただけると思う。

ちなみに、フランス人の友人や在仏の日本人でもこの手の相談は専門的過ぎて分からないことが多い。本当にケースバイケースなのでいわゆる「正解」は自分で作るしかない。「求められた書類は弊社の場合、この書類が該当します」というように、こじつけでもなんでも自分で書類を作ったり人に手紙を書いたりしてなんとか揃えれば良いのだ。

必要な書類が揃ったら、広尾にある在日フランス大使館に予約をして行けば、それまでの対応が嘘のように担当者はにこやかに迎えてくれる。その場で指紋採取と顔写真を取られ、一部追加書類を要求されたので後送すると、10日後くらいだっただろうか。大使館に預けた自分のパスポートが入った包みが届いた。送付状も紙切れ1枚も入っておらずそっけない。パスポートを開くと、中にビザが貼ってあるのだ。

ビザの準備を本格的に始めたのが年明けの2月頃で、取得できたのが7月。途中、どうしても準備するのが難しい条件があり、当初取得を目指したビザを変更するなど紆余曲折あったがなんとか取得することができた。ただ、この駐在員という身分は、雇用契約を日本本社で結んでいるため、現地で何かと制約がかかることもある。例えばこのビザの更新は基本的にできず、3年で帰国しなければならない。

とはいえ、そのまま滞在し続ける方法もないわけではないようだ。

ビザの取得はそれだけでも一仕事だが、取ったからといって全ての滞在に関する問題が全てクリアになるとは限らないのが、海外滞在の大変なところだ。