【パリブログ】Vol.6「ギャラリー物件決定」

パリブログ / 2019年11月19日

11月19日(火)

近所の公園。この日も10時頃からお昼過ぎまで雨。

毎日毎日寒くて、暗い。

現在の日の出は8:00前後だが、目覚めると窓から厚い雲で覆われた灰色の空が見える日が続いている。そのうえ週の半分以上は朝からしとしとと雨が降っている。1日中雨ということは少なく、午後の数十分から1時間程度は日が差すこともあるのだが、毎日こんな天気では気持ちも晴れない。芝生の上で水着になって太陽を全身に浴びているヨーロピアンの気持ちが少しわかる気がする。

これからますます気温は下がると思うと億劫だが、冬の間に一度は暖かい外国へ、太陽の光をチャージしに行きたいと思う。

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こちらに来てからの大きな仕事のひとつ、賃貸物件の契約が完了した。場所は、サンジェルマン=デ=プレから5分ほど歩いた14 rue Saint-Sulpiceという通り。サン=シュルピス教会というノートルダム大聖堂に次いで二番目に大きな教会の脇を通る通りだ。観光客や買い物客で賑わうサンジェルマンやオデオン界隈から、サンジェルマン大通りを渡り少し南下すると、パリ6区の少し落ち着いたシックな雰囲気になる。周辺には女優や俳優など有名人も住んでいるという噂も聞く。さらに数分南に歩けばリュクサンブール公園もすぐだ。暖かくなったらお昼は公園で食べるのもいいかもしれない。

パリらしい年季の入った建物。

青いファサードが通りで一際目を引くこの物件は、以前は「la chambre claire」という写真専門の書店が30年以上入居していた。そのためパリで写真関係の方々にこの場所を伝えると「あぁ、あの書店の場所ですか」とすぐに分かってもらえる。

ちなみに、「la chambre claire」は、5区のRue d’Arrasに移転し「la nouvelle chambre claire」(nouvelle は新しいという意味)として引き続き営業を行なっている。日本を含む各国の写真集を取り扱っており、店内で写真の展示も行っている。写真好きならぜひ訪れていただきたい書店だ。

螺旋階段はかなり古いようでぐらぐら揺れる。修理はできないそう。

物件は一階、地下階、そして写真の螺旋階段を上ったところにある小さな部屋の3つの階で構成されている。一階と地下階を改装してギャラリーとして使う予定だ。

一階から地下階へと続く螺旋階段。

前に入っていた書店もここをギャラリーとして使っていた。

地下階は石塀が美しいカーヴ。3つの部屋があり、展示スペースとしては十分な広さだ。

壁をぶち抜き床に埋め込まれた電気ケーブルなど大胆な施工。

この壁に作品が展示されるのが待ち遠しい。

7㎡ほどのスペース。大きな窓から通りが眺められる。

螺旋階段から続く2階部は簡単な事務所として使用する予定だ。歴史のある建物なだけに一癖あるが、うまく内装を整えれば面白い展示空間となるはずだ。

さて、ひととおり物件を紹介したが、物件の決定から契約書にサインをして「鍵」を受け取るまで実は約1ヶ月ほどかかっている。その間に行われていたやりとりについて今回はお伝えする。

物件の契約に際して関わっているのは主に物件の貸主、借手である我々、それから不動産屋と3者だ。我々は不動産会社のアノンスをもとに物件の内見をした。Vol.4で、物件探しのプロセスについて書いたが、10月上旬に代表の清永と内見をした時に物件を決めて、不動産会社を通じて大家さんへここを借りたいという意思を伝えた。意思表示をする際に会社概要、日本本社の定款、登記簿謄本、支払い能力を証明する書類、事業計画書、社長の履歴書(!)、社長および私の身分証明書などを用意した。フランスでは商業物件の賃貸契約後に支払いが滞ることがたびたびあるそうで、貸主はかなり慎重に借手を選ぶのだそうだ。

それから、不動産会社とともに大家さんの提示条件の交渉を試みた。具体的には家賃の引き下げ、それから内装工事が必要なため、工事期間中の家賃支払いの免除などだ。さらに貸手、借手双方の弁護士を通じた、契約書の内容確認および修正といった作業がある。先方が提示した条件が我々の事業を行う際に、問題がないか借主に過度に不利な記述はないかをチェックしてもらう。

また、サインをする権限がある人間がパリにいないため、日本本社の社長からの委任状を作り私がサインするという方法をとった。

以上を整えるのに数週間の時間を擁した。日本とフランスの間での書類のやりとりが発生したことや、契約書の翻訳などの時間もかかる。時間こそかかったものの比較的穏便にことが進み、双方が納得できる条件で合意を得ることができた。

ただ、最後まで問題となっていたのが、支払いについてだ。口座開設の手続きを行っている銀行がなかなか稼働できす、初期費用の支払いがサインする日に間に合わない状況だった。

実はもう一社韓国の会社から同じ物件にアプローチがあったようだが、大家さんも借手を選ぶのに疲れていたそうだ。我々に信頼を置いてくれたようで、日本から送金する時間などを考慮して、初期費用の支払いに数日間の猶予を与えてくれた。

サインする日は、不動産会社で大家さん、こちら側の弁護士、不動産会社担当者と代表それに私とサポート会社F者の担当者というメンバーでテーブルを囲んだ。その場で少しだけ最後の確認、という感じで雑談をしてから、契約書にサインをした。待ちに待った「鍵」がやっと手に入ったわけだ。

無事に物件の契約が済んだことはホッとしているが、鍵を受け取った時点で家賃免除の期間もすでに始まっているので、すぐに次のステップへ移行する必要がある。次の大きな仕事は、フランスでは苦労話が絶えない内装工事だ。

サン=シュルピス通りにはブティックや古書店が並ぶ。奥に見えるのがサン=シュルピス教会。