田中昭二「BLOSSOM IN NIRVANA」インタビュー

2020年3月28日

田中昭二 作品展「BLOSSOM IN NIRVANA」が京都写真美術館ギャラリー・ジャパネスク2F「花」にて、3月24日(火)から4月5日(日)まで行われているのでレポートをお届けします。

田中昭二さんは当館では、2018年の「JAPANESQUE DISSOLVE」、2019年の「寂光/水の影」の展示に続いて3度目の開催となります。田中さんは日本に根付いた宗教観、死生観の追求を行い、それを写真作品に投影されてきました。前回展示と続いてピエゾグラフィーを作品に生かしてモノクロの世界に奥行きを生み出される作家です。

Q.タイトル「 BLOSSOM IN NIRVANA」の由来
今回の展示は、前回こちらで展示した「寂光/水の影」の続編であり、自分なりに想像する日本における彼岸の世界観を表現しようと心がけました。その世界とは、このように暗くて光が弱々しい印象であると考えており、自然と心惹かれる水辺・水際の情景に、花を添えて新たな世界観を創出しました。今作はテーマ有りきに制作したのではなく、自分の心の赴くままに撮影して、それらを総合してタイトル名に何がふさわしいかと考えた結果、このようになりました。

Q.プリント技法「ピエゾグラフィー」について
ピエゾグラフィーとは、黒と白の階調を7分割し、そのグレーインクだけを用いてプリントするモノクロームのプリント技法です。どうしても暗めな印象を与える今回の作品で、黒い部分がつぶれないようにと思い、細かなハイライトを表現することのできるピエゾグラフィーを用いてみました。作品制作は、あくまで答えのないプロセスなので、自分の中でも区切りをつけようと思い信頼できるアトリエマツダイラさんにお願いした結果、自分の思い描く世界観を創出できました。

Q.お客さんに伝えたいメッセージ
前回の展示で、初めてピエゾグラフィーを用いた展示をしたのですが、お客さんがあらゆる角度から見ていて、楽しまれていたのを覚えています。ピエゾグラフィーの作品は見る角度によって、光の反射により異なる印象を与えてくれます。
作家がひとたび展示空間を作れば、その後は来る客の気の向くままに鑑賞してもらえればなと思います。思いもしなかった反応が時として新たな気づきになるので、自然体で楽しんでもらいたいですね。

Q.今後の作家活動の展望
本覚思想が根付く日本において、現世に生きている間には決して見ることができないけれども想像を巡らせて、自分なりの浄土・ニルヴァーナ・彼の岸の世界観を追求していきたいと思います。差異と反復を繰り返して、今回のような作品をさらに深めていくことができたらと考えております。宗教の教義にはさほど興味がないのですが、宗教が感性に訴える美意識に傾倒して、作品作りに生かしたいですね。
いろんなしがらみから解放されて自分の心の向くままにという、「逃避」の姿勢で気楽に生きていきたいですね。心を動かす、美しいと思わせるようなモノしか撮影したくないし、気持ちよく余生を過ごしたいというのが今思っていることですかね。

【田中昭二 作品展「BLOSSOM IN NIRVANA」】
2020/03/24 ~ 2020/04/05
会場:京都写真美術館 ギャラリー・ジャパネスク 2F「花」
時間:11:00〜18:30
田中昭二プロフィール