Matthew Jordan Smith “FLUID”インタビュー

2020年9月7日

Matthew Jordan Smith Photo Exhibition “FLUID”が京都写真美術館 ギャラリー・ジャパネスク2Fで9月1日(火)〜9月13日(日)まで行われていますので、そのレポートをお届けします。

今回の展示作家、マシュー・ジョーダン・スミスさんはエンターテイメント、ファッション、ビューティーを主とする30年の経歴を持つアメリカ出身の写真家です。現在は日本を拠点とし、NY、LA、パリなどの世界各都市をまたにかけて活躍されています。

 展示「FLUID」は、フィルムカメラを用いて、人が作り出す流動的なイメージを、和紙「アワガミ」によって、映画の一場面や絵巻物のような世界観で創出されています。瞬間を切り取った「写真」でもなく、時間経過を捉えた「動画」でもない、それらの間にあるものを「FLUID」で表現されました。
 全ての展示作品は、徳島にあるアワガミファクトリーの工房で、アワガミインクジェットペーパー「楮-厚口-白」にてプリントされています。

Q.展示タイトル「FLUID」について
Fluidとは流体、すなわち、形のないガスや液体などの物質を指します同じ瞬間が決して起こりえない、諸行無常の象徴としての水の流れのように、人の動きのとらえどころのない美しさを表現しようと、このようなタイトルにしました。

Q.長さ14mにも及ぶ作品について
映画フィルムやアニメーションのように、長大な瞬間を捉えて、留まることのないFlow(流れ)を表現するだけでなく、部屋全体を使ってうねりや波を表現しました。アワガミファクトリーさんも、これまでこれほどの長大なプリントを手がけたことがないとのことだったので、共に新たな試みを挑戦することができました。

Q.本展における「音楽」との親和性、共通点について
私にとって、音楽はソウル(魂)に響く芸術です。この展示では、インクジェットで”static music” (静的な音楽)として視覚的芸術にしました。
両者の共通点は、シークエンスやFlow(流れ)が知覚されることであり、時間的・空間的な豊かさを感じられることですね。

Q.日本文化ユニット「Kaguya-Sis」との共同制作について
黒澤明監督の映画作品「夢」の序盤に、ある子供が草の茂みから「狐の嫁入り」を見るシーンが有りまして、それが非常に印象的でした。それを見て温めていた構想と、彼女たちの提案によって、日本女性が演じる細やかで美しい舞を表現しようとしました。京都という地で、アワガミファクトリーの和紙に、日本女性ユニットとコラボレーションすることで、文化の融合を実現できて大変嬉しく思います。

Q.制作を通して思うアナログとデジタルの世界について
デジタルには限りがありますが、アナログには限界というものがありません。デジタルな情報はデバイス機器によって得られる一方、アナログな情報はまさにリアルで、完全には捉えることが難しいのです。そうした魅力があるからこそ、今回の展示でこのような観点に立って表現しようと思いました。

Q.アワガミインクジェットペーパーの印象
質感・仕上げ、ともに非常に素晴らしいものでした。自分の思い描いた、流れるような印象を「アワガミ」のおかげで表現できました。和紙の自由に折り曲がる柔軟性と、破れづらい耐久性も素敵ですね。

Q.Awagami Factoryでの経験
実際に徳島県の工房に赴き、和紙の製造からプリントまでの全プロセスを体験することができました。ワークショップ初日は楮を剥く、それを洗い、和紙に変化する工程を目にしました。日本の伝統技術を学び、実際に行うことができたのは、大変嬉しく思います。

Q.今後の作家活動の展望について
今回の作品で最大なものは14mでしたが、より大きな作品づくりを目指しています。より多くの経験を重ねて、さらなるイメージの深化、音楽の造詣を深めて、鑑賞者への感動を与える作品を追い求めています。今回の作品は最長14メートルですが、更に大きい30メートル規模のものを作成したいと思っています。

Matthew Jordan Smith Photo Exhibition “FLUID”
会期: 2020/9/1(火)〜 9/13(日)
会場:2F
時間:11:00~18:00
※無休、入場無料
URL: https://kyoto-muse.jp/exhibition/113476
マシュー・ジョーダン・スミス Instagram: @matthewjordanSmith
マシュー・ジョーダン・スミス webページ:http://matthewjordansmith.com/

プリント協力:アワガミファクトリー