大町憲治「-予感-」インタビュー

2020年11月27日

大町憲治 写真展 蒔絵師の視点 PartⅢ「-予感-」が京都写真美術館 ギャラリー・ジャパネスク2Fにて、2020年11月24日(火)~12月6日(日)まで行われているのでレポートをお届けします。

――展示タイトルについておきかせください。

京都写真美術館では三回目の展示になるのですが、一回目が「IRODORI」で、二回目が「CONTRAST」とすべてアルファベット・英語表記のタイトルでした。今回もアルファベット・英語表記でのタイトルを考えていたのですが、今年は新型ウイルスの影響で生活環境が変わってしまったせいか、自身でも今後の活動について考えることも多々あり、タイトルがなかなか思い付かなかったです。
そんな中、色々な物事が変わっていく不安や期待の予感を感じ取ったという観点から、今回は漢字で「予感」と日本語のタイトルを思いつきました。アルファベット・英語表記を押し通す事も考えたのですが、日本語表記の方がストレートに伝わるのではないかと思い「予感」と言うタイトルを思いつきました。

――では作品はコロナ禍で制作されたものが多いのでしょうか。

そうですね!私の作品は水面の長秒露光やモーションブラー の撮影が多いので越境をして海へ撮影に出かける事もあるのですが、やはりこの状況下では県境を跨ぐ移動を避けなければと、活動拠点としている滋賀の琵琶湖周辺で撮影したシーンが全てとなりました。

――今回で写真展は3回目ですが、回数を重ねるに連れて見えてくるものなどはありますか。

やはり自分へのハードルが益々上がっている感覚はありますね。
ただ、プレッシャーだけではなく楽しみながら撮影をしていますので、ご高覧頂く方々にも楽しんでいただけるようにと考えて展示をさせて頂いております。
私の作品の多くは風景写真です。多くの方々が見慣れているジャンルのひとつかもしれませんが、今回も貝や宝石を写真と組み合わせたシェルフォト(写真に螺鈿という漆芸の技法を取り入れた独自の写真作品)というシリーズを展示していますので「こんなこともできるんだなっ!」と感じていただけると嬉しいです。
他にも今回は蒔絵の作品と写真作品を同時に展示していますが、蒔絵作品のディスプレイの中に写真を取り入れるなど組み合わせ方などの工夫をしています。
ただ漆の持つ素材には存在感が強いので、写真の良さを損なわないように心がけながら制作をしてきました。

――伝統工芸である蒔絵と、現代美術の中でもあたらしい分野である写真作品を作る、大町さんの中での2つの関係性についてお聞かせください。

どちらも好きという気持ちから始めたものなので、私の中では互いに近い存在かもしれませんね。
ただ、蒔絵は伝統工芸として芸術及び美術品である認識が広くあるのですが、写真での表現の認識はまだ広まりきっていないと自身の中で感じます。
なので、こうして同時に展示することで相乗的にどちらもアートであるという見せ方ができればと思っています。
また、私が撮る写真はデザイン的な表現が強いという事と、写真に螺鈿(切り抜いた貝や宝石類を埋め込む漆の技法)を施したりすることから、写真も”撮る”というよりは漆工芸・蒔絵と同じように”創る”という体感で制作しています。
なので、蒔絵等の制作を写真に活かす事もでき、漆工芸やデザイン制作の延長線上に並んでいるようなイメージです。

――今後の活動についてお聞かせください。

これからも蒔絵と写真のコラボレーションを展開していければと思っております。いずれはワークショップなどもしたいですね。
このような状況下では容易に外出が難しいかもしれませんが、ウイルス対策には万全を尽くしていますので、実際に会場に足をお運び頂き、作品を御自身の眼でご高覧いただければと思っています。特に宝石や貝、銀の露を使ったシェルフォトなどは光の反射によって見え方の変化を楽しんでいただければと考えています。
シェルフォトにはまだまだ様々な試行錯誤によって新たな表現ができると考えています。今後も蒔絵と写真を武器に様々な形でアプローチをしていけたらと思っています。

【大町憲治 写真展 蒔絵師の視点 PartⅢ「-予感-」】
2020/11/24(火)~12/6(日) 11:00~18:00
京都写真美術館 ギャラリー・ジャパネスク 2F
大町憲治HP
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