藤村 大介 写真展「Capture time」

レポート / 2020年12月19日

~目に見えない時間の流れを写し止める、独自の撮影手法への挑戦~

会場にて、藤村さん。「哲ちゃんポーズ!」と、写真家の清水 哲朗さんに倣ったポーズを披露してくださいました!(笑) 藤村さんは全日在廊予定とのこと!詳細はFacebookでご確認ください。

藤村 大介さん 写真展「Capture time」が、12月20日(日)まで外苑前駅より徒歩3分ほどのところにあるNine Galleryで開催されています。世界500都市以上を訪れ、世界遺産や夜景、名所、旧跡などを中心に、人々の営みが織り成す美しい風景をカメラに収めてきた、写真家の藤村さん。独創性のある撮影方法に定評があり、ライフワークとして25年以上撮影に取り組まれている「世界の夜景」シリーズは、世界屈指の感動夜景として人気を博しています。

藤村さんは近年、「宇宙へと繋がる人の心」をテーマに作品制作に取り組まれています。2018年に坂出市民美術館で開催した個展「Earth Glow」で地球の輝きというポジティブな面を表現し、本年7月にLUMIX GINZA TOKYOで開催した個展「Invitation to Darkness」では、環境汚染や文明破壊を行う人類への警鐘といったネガティブな面も写し出しました。

そしてシリーズ3作目となる本展では、独自の撮影手法により「時間の流れ」を写真で表現されたとのことです。瞬間を切り取るイメージが強い写真というメディアで、時間の流れという不可視な対象をどう写すのか。そして、これまでの作品のイメージとは180度異なる本作について、お話を伺いました。

モノクロ作品であることで視覚情報が整理され、幻想的な光がより印象的に感じられます。「全点デジタルで撮影しました。デジタル作品は、長時間露光だと時間が経過するほどノイズが入ってしまうので、本展はここ2年ほどで撮影した作品で構成しています」と、藤村さん。

――本作を制作されるまでの経緯について教えてください。

本作は、「時間の流れ」がテーマとなっています。ビックバンにより宇宙が誕生して以来、時間という概念はずっと存在してきました。しかし、時間を常に意識しながら生きている人はいませんし、人間が意識しているかどうかに限らず、時間は刻々と流れていくものです。そこで1次元に属する「時間」を、2次元の「写真」に写し出すことで、時間を意識してとらえてみたいと考えました。目には見えない時間を、写真を介してとらえることが出来れば、僕の作品制作の根底にある「宇宙へと繋がる人の心」というテーマにも結び付くのではないかと思うのです。そして、時間を写真で表現するにあたり「長時間露光」という撮影手法を活用しました。

撮影を行う際には、まずイメージを思い描くことが大切だと藤村さんはいいます。「イメージがなければ作品は制作出来ません。あとはいかにイメージに通りに仕上げられるかが腕の見せ所。安易に画像処理に頼らず、撮る段階で完成まで持っていくのがプロの撮影だと思うのです」

例えば、この作品は0.4秒ほどのシャッター速度で撮影しました。本展の作品の中では、短めなシャッター速度です。現地でこの風景を目にしたとき、岩のゴツゴツとした質感や荒々しい波の筋から「時間」を強く意識したので、そのイメージの再現にこだわりました。また本作の撮影においては、自然をよむということも重要でした。波ひとつとっても、その強弱や満ち潮か引き潮かなどで差が生まれます。そういった変化に合わせてシャッター速度を調整する必要があったので、撮影には30分も費やしました。この日は風が強かったので、飛沫をざぶざぶ被りながら撮影し、終わったときには全身塩臭くなっていました(笑)

――全点モノクロ作品で、かつ自然風景がメインという今回の展示構成は、これまでの藤村さんの個展とはだいぶ印象が異なりますね。

かれこれ25年以上「世界の夜景」シリーズの撮影を続けてきたので、僕の作品に対し「夜景」のイメージが定着していることは否めません。ですが、実は発表する機会がなかっただけで昼や夕方にも撮影は行っていますし、世界遺産や街並みなど、夜景以外を被写体とした作品も数多くあります。にもかかわらず、「夜景写真家」という型にはめてとらえられてしまうと、作品制作の幅が狭まってしまう恐れがありました。なので、そういった僕の作品へのイメージの払拭も兼ね、これまでの僕の作品には類を見ない新たな作風に挑戦したのです。

本展のアートディレクションを手掛けたのは、niwanoniwaデザイン&編集事務所 共同代表であり、Nine Gallery 主宰の三村漢さん。「漢ちゃんと一緒に仕事がしたかったので、会場はNine Galleryに決めました。プリントやディレクションはさることながら、写真の良い部分を引き出す照明の当て方が素晴らしい!漢ちゃん曰く『写真の魅力2割増』とのことです(笑)」と、嬉しそうに話される藤村さん。

――また本作は、全点「KANIフィルター」を使用されたそうですね。

「KANI」フィルターを手掛ける、ロカユニバーサルデザイン株式会社・社長の伊藤さんとは、ビックカメラでカメラの販売業務に就いていたとき、一緒に働く機会があったのだそうです。「その後しばらく疎遠になっていましたが、3年前のCP+でたまたま再会しました。当時の僕は、別の会社のフィルターを使用していましたがね(笑)」と、藤村さん。

僕がイメージした画を写真として具現化する上で、「KANIフィルター」は必要不可欠でした。例えば、この作品は「多重露光」で撮影したのですが、よく見てみると不思議な光景が写し出されていることに気付くかと思います。実は2度シャッターを切っていて、半分よりも上か下かでシャッター速度が異なるのですね。僕の頭の中にはこの画のイメージがすでにあったので、伊藤さんに頼み込んで「Premium Hard GND 3.9」という製品を特別に作ってもらいました。伊藤さんは写真家の気持ちに寄り添ってくれるので、無茶なお願いに不満をこぼしつつも、いつも力になってくれます!

――各分野のプロの力によって本展は成立しているのですね!では最後に、今後の作品制作への展望についてお聞かせください。

「宇宙へと繋がる人の心」シリーズを今後も制作していきたいと考えています。作品のテーマは頭の中にいくつかありますが、その中でも「音」や「光」といったテーマが特に気になっています。本作の「時間」とは、全く異なる作品になると思うので、独自の撮影手法をまた模索していきたいと思います。今年は2回も個展を開催したので、これから2、3年ほどは作品制作に専念したいと思います。

本来写真とは、撮影者の目の前の「瞬間」を写し止めるメディアです。しかし本展では「長時間露光」という手法により、雲や波の動きが光の層となって写真の中に写し止められ、「時間の経過」をとらえることができます。それは本来、肉眼でとらえることのできない「時間」という不可視な対象を写真が可視化したということに他なりません。では「時間」を意識したとき、本展の作品からは何が見出されるのか、ぜひ会場で確かめてみてはいかがでしょうか。

■今後の写真展情報
藤村 大介 写真展「Habitable zone〜生命居住可能領域〜」が「あーすぷらざ」にて、2021年1月23日(土)から開催予定です!詳細はこちら

細い木のフレームに縁取られた作品。余白がない分、よりダイナミックに迫ってきます!「これは僕のアイデア!Nine Galleryのこけら落としで開催された、中西敏貴さんの写真展「Signs」で見たフレームから刺激を受けました」と、藤村さん。

会場には、ロカユニバーサルデザイン株式会社の「KANIフィルター」特設ブースもあり、本作の撮影で使用されたフィルターを実際にご覧いただけます!社長の伊藤さんも全日在廊予定です。KANIフィルターについて親切丁寧に教えてくださいますので、ぜひ展示と併せてチェックしてみてください!

ステートメント

【藤村 大介 写真展「Capture time」】
会場:Nine Gallery
会期:2020年12月15日(火) 〜 2020年12月20日(日)
10:00~19:00(最終日は17時まで)
入場料:500円
https://ninegallery.com/exhibition/306

藤村さん WEBサイト
http://fujimuradaisuke.net/
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ロカユニバーサルデザイン株式会社 WEBサイト
https://www.loca.design/

藤村 大介 写真展「Invitation to Darkness ~美しき闇への誘い~ 」の写真展レポートはこちら