~それはまるで心の中だけにある幻想の花園~
同時期に行われている「遠い聲」に続き、7月5日よりソニーイメージングギャラリー銀座にて開催されている写真展にお邪魔して、お話を伺ってきました。
ー今回大きなサイズの作品が展示されているのが特徴的ですが。
(ソニーさんの)天井の高い、広い空間で展示が決まったときに空間と余白を活かした大きなプリントでの構成が頭に浮かびました。作品と作品の間に余韻をもたせることによって、ひとつひとつの作品と鑑賞者の方が向き合って対話していただくようなイメージでレイアウトを考えました。
ーサイズの違う3枚組の作品とても素敵ですね。
1枚で見ても単独での世界が成立し、3枚の組としてもより深く鑑賞していただけるようなイメージで作りました。今回の展示でもポイントとなる作品です。
ー写真作品ですが、ペインティングのようなタッチも感じられました。
写真のリアルの部分が薄れていくことで、絵画的な表現に近寄っているところがあると思います。フェイクではなくあくまでも写真を使い、自分の中でイメージしている世界を描き出したい。現実のどこかに(私が)描き出した世界があるかもしれない、というリアルさを残しつつ、ファンタジーや夢の中の世界といった淡いを見る人に感じていただければと思います。
ー会場の展示を二つに分けられているように思いました。小さいサイズの作品はより近づいて見ることで、自分の内側と外側を見ているような気がしました。
手のひらサイズの作品たちは本当に自分の心の内を、まるで覗き込むように鑑賞していただくことでより鑑賞者のパーソナルなイメージとリンクしていくところがあると感じています。
ー同時期展示の「遠い聲」では、壊れかけのカメラが最期に見せる光のグラデーションに、儚さや壊れゆくノスタルジーを感じ、こちらの展示では此からどこか~といったまだ見ぬ未来を見ているような気がしましたが。
そういう意味ではこちらの作品の方が強く、またモチーフにしているお花は生命の象徴だったりするので、希望といったものを感じていただけると思います。「遠い聲」は全然写っていないコマも多く、自分自身も撮りながらどういったものが写っているのかと…。実際に現像し像が浮かび上がってきたものを見た時、「綺麗」と思った感覚は強かったです。
「そしてこの世界はなんて美しいのだろう、っていう感動がありました」
-今まで多重露光のシリーズ作品をデジタルとフィルムで撮られてきていて、作品としての違いなどお聞きしてもいいでしょうか。
デジタルとフィルムで撮るときは、その自分の心の内というものがそれぞれ違っています。フィルムは加工ができない、本当に自分の心の内がストレートに出てしまっている。撮ったあとの作品を見てもそれをすごく感じます。だからこそ誤魔化しがきかないのが面白く、素直な心が出てしまうのが恥ずかしくもあるけど、この世界が好きだと感じています。
デジタルは、ある意味自分の理想と思っているイメージや、意図して美しいと思うイメージにより近づけていっている感覚があります。こう見せたい、伝えたいと思う作品づくりへとなっています。
フィルム、デジタルのどちらも魅力があり、好きだからこそフィルムに向き合う自分も、デジタルに向き合う自分のどちらも大切にしていきたいと思っています。
同時に両方のシリーズを見せられる機会をいただき、ありがとうございました。そしてどちらも楽しんで見ていただけると本当に嬉しいです。
二つに分けられた展示のそれぞれの作品から、自分の外面と内面を垣間見ているような錯覚、そして美しい作品世界に浸る幸福感を感じました。一人一人の心の中にひっそりと咲く花園が具現化されている写真展、ぜひご覧ください!
【市ノ川 倫子 写真展「Even if the sky cracks and lies drop」】
会期:2024年7月5日(金)~7月18日(木)
11:00~19:00
会場:ソニーイメージングギャラリー 銀座
www.sony.co.jp/united/imaging/gallery/detail/240705/
市ノ川さん Webサイト
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